「国宝松江城」がフルネームではありません
小生は三江線へ行くのに際し、まず東京駅からサンライズ出雲で松江へ行き、一畑電車に乗ってついでに出雲大社に参拝してから、翌日の三江線乗車に備えて江津に投宿しました。で、松江で多少時間があったので、あいにくひどい暴風雨でしたが、これだけは見ておこうと松江城にバスで向かいました。
(天気が悪くて外部から碌な写真が撮れず)
さすがに悪天候で、松江城内も人影はまばらですが、それでも雨合羽に身を包んだ一団が…と思ったら中国人観光客一行でした。インバウンドだ何だと騒がれてますが、松江のような渋い土地にもこれだけ観光客が来ているのかと、いささか感心しました。日本人が中国に行ったと考えると、松江に相当しそうなのは、うーん鎮江あたりかな?(大きくはないが歴史ある街で、黒酢の名産地であるなど美食もあり、パール・バックが住んでいた)
松江城は1611年建築の天守が現存しており、これが去る2015年国宝に指定されたというのはそれなりにニュースになりました。入ってみると、巨大な木の柱が何本も建っていて、大いに迫力があります。ただ天守内の結構な箇所が、カバーに覆われて補修中のようでした。
立ち入りできない箇所があるのは残念ですが、これはこれで珍しい情景かもしれません。
さて、そんな天守閣の中に、ちょっとした展示がありました。その一つに、日本に現存する12の天守の写真を、簡単な紹介とともに掲げたものがありました。小生はそれを何となく眺めていたのですが、それにふと違和感を覚えました。以下にその一部を掲げます。違和感の正体がお判りでしょうか。
(この写真はクリックすると拡大表示します)
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写真の説明の額に、まさに文字通り取ってつけたような黄色いテプラがあります。なにせ色が黄色だから目立つこと目立つこと、浮いて見えてしまいます。で、そこまでして何を追加しているのかというと…。
「国宝」「重要文化財」
…。なるほど、先年国宝に指定されたので、書き加えたのですね。しかし随分と目立つようにしているのは、それだけ「国宝」に対する憧れが強かったということなのでしょうか。
そういえば、松江城まで乗ってきたバス(観光地を一周する、観光客向けバス)の車内放送でも、松江城については必ずと言っていいほど「国宝」を枕詞につけ、「国宝松江城」と連呼していました。松江城は戦前には国宝だったそうですが、戦後の法令の改定で重要文化財に格下げされていました。それが2015年になって国宝に復帰したというので、それなりに全国的な話題にもなりましたし、地元では盛り上がりもしたのでしょう。
しかしだからとって、あんまり国宝国宝連呼するのも品がいいとも思えません。「国宝松江城」とばかり呼んだり書いたりしていると、それこそさっきの中国人観光客の方など、「あれ、この城の名前は『国宝松江城』なのか?」と、漢字が読めるだけに誤解でもされるんじゃないかと心配になります。「月山富田城」じゃあるまいし。まして他の重要文化財の城と比較して威張るような展示をするのは、不昧公やラフカディオ・ハーンのお陰で松江が持っている、品のいい文化という財産を損ないかねないものです。その辺、関係者の一考を煩わしたいものです。
古い順でも大きい順でもなく、国宝か重要文化財かで配列している