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私は如何にしてソシャゲを辞めたか ゲーム的マラリア療法

 ちょうど一年ばかり前ですが、香川県の問題ある条例にかこつけてゲーム依存症の話をしました。

 かつてはゲーム依存といえば、オンラインゲームに何日もログインしっぱなし、トイレにも行かずペットボトルに排尿、みたいなのが典型でしたが、スマートフォンの普及とそれを主たるプラットフォームにした「ソシャゲ」の急激な興隆は、ゲーム依存の形を大きく変え、いわゆる「ガチャ」を回すのに何十万もつぎ込んでしまう、といった問題が表面化しています。ソシャゲは何時間もぶっ続けでやることは必ずしもないかもしれませんが(イベントの時には「走る」人も結構いるでしょうが……)、毎日定期的にログインし、ちょっと手が空けばすぐスマホをいじってやってしまう、そしてガチャを回してしまう、と生活の隙間に浸透していき、やがて生活の方を圧迫していく、そんな問題を引き起こしています。
 去年の記事でも書いたのですが、ソシャゲのガチャで何十万も費やすのは、決してゲーマーとしても賢い消費行動とは考えられないにもかかわらず、SNSではガチャで「爆死」したことをひけらかす連中がまま見られます。馬鹿を晒してどうすんの、と私は思うのですが、いやこれは、昔で言えばわざわざ痛い思いをして刺青をして見せびらかしたみたいな、男性性を誇示する行為なのだ、と友人が論じていて、なるほどと感嘆したのです。その論を凝縮したツイートを以下に引用しておきます。
 「スパチャ」とは youtube のスーパーチャット機能のことで、配信しているアイドルや Vtuber にお金を出して構ってもらう、というのを「買う」になぞらえたわけですね。なかなか秀逸ではないかと思います。本質が変わっていないと同時に、技術が進歩した結果、かえってショボく情けなさが際立つようになったというところが。バクチは勝つこともあるけど、ガチャはねえ……。




 そんなわけで、ソシャゲに依存して時間やお金を吸い取られるのは、バカバカしいと思っている人も少なくないでしょう。ちょっとした娯楽として程よく付き合っている人の方がもちろんずっと多いとは思いますが、けっこう深刻なことになっている人も無視できないほどいるように思われます。ネットをちょっとうろつけば、当ブログで過去に報じた歴史修正主義出版物の広告(こちらこちら)と同じくらい、『ビビッドアーミー』なんぞのさまざまなソシャゲの広告が目に付くわけで、それだけ宣伝費をかけても算盤が立つだけは儲かっているのでしょう。
 そこで、「ソシャゲ 辞め方」で検索すると、「私はこうしてソシャゲを辞めました!」みたいなブログがいっぱい引っ掛かります。それだけ辞めたいと悩んでいる人、辞めようと苦労している人が、実際にいることを伺わせます。
 で、私もそれら辞め方ブログを一ダースくらい読んだのですが、正直ちょっと苦笑してしまいました。内容がみんな似たり寄ったりで、「思い切ってアプリを消そう」とか書いてるのですが、思い切れないからみんな悩んでいるのではないでしょうか。また、ソシャゲに代わるリアルの楽しみを持つこと(運動したりとか)、リアルの付き合いを大事に、みたいに書いてるブログも多いのですが、そういうリアルのいいことがないからソシャゲに依存しているともいえるのです。

 さらに「うーん……」と唸ってしまうのが、「ソシャゲを辞めて、時間とお金を自己投資しよう! ソシャゲでは成長しない、自己投資して成長しよう!」みたいな結論になっているブログが、結構多かったんですね。近年とみに増えてネットをガラクタの山としている、情報商材とかの勧誘のようなノリのブログが多くて、悪い意味での「意識の高さ」のようなものを感じてしまうのです。「成長しなければならない!」という観念に追い立てられ続けているのも、一種の依存症ではないでしょうか。
 しかも、その「成長」が、自分の好きなことへ打ち込んでいるのならまだしも、「仕事でスキルアップ」みたいなのですと、それは資本主義の論理にあまりに深く個人が絡めとられてしまっているのではないか、という思いも抱かざるを得ないのです。ゲームに依存しても資本に搾取されていることには変わりないですが、それから抜けたと思ったのにまた搾取されるのは、どうも感心しません。
 この、資本主義下で個人に強いられる「成長」の問題について、先にラノベ原作でアニメとなった『弱キャラ友崎くん』を題材に述べた、秀逸な評論がありますので、ご紹介しておきます。
 で、こちらの note を読んでいただければ、結末で何と当ブログの過去記事をリンクしてくださっていることがお分かりいただけると思います。実はこの note の筆者の髙橋優さんとはちょっとしたご縁で最近オンラインで交流があり、私も鼎談企画で最近はやりの『鬼滅の刃』を論じる機会を与えていただきました。『鬼滅の刃』鼎談企画はこちら。私は当然、「無限列車」について語る……のは語るのですが、それ以上に例のごとく、近代家族について語っております(笑)
 
 で、話を戻しまして。
 ここから個人的な話になるのですが、私も実はいくつかのソシャゲをやっていました。しかしちょうど1年前にあることを機会にすっぱりと辞めることができ、アカウントもハードディスクの容量を食うので削除してしまい、二度とやろうとは思えなくなりました。ソシャゲを辞めたい方のご参考になるかは正直怪しいですが、もしかしてこれで救われる人がいるかもしれないので、ちょっとそのことを書いておきます。

 私がソシャゲを始めたのは、たぶん2014年です。当時、「艦隊これくしょん」がリリースされて急速に人気を拡大しており、私は歴史研究者としてあまりに悪趣味なそのゲームに警戒感を持っていたのですが、そういう美少女ゲーム的なものに関心が薄そうな身近な人でもやりこんでいるひとがみられるようになり、ますます警戒を強めていました。それがハッシュタグ「#ところで艦これ厨は滅ぼされねばならない」に繋がっていくわけですが。
 しかし私もそこで少し考えました。批判するにしてもソシャゲを何も知らないでは、これでは空を撃つことになりかねない。何かやって感覚をつかんでみよう。とはいえ艦これをやるのは業腹だし、当時は人気絶頂でアカウント取得も大変でした(確か)。そこで、同じDMMで違うゲームをやってみました。
 最初は名前も忘れた箱庭ゲーでしたが、すでに早くもオワコン化しつつあってすぐにやめ、次にそこそこ長くやったのが『俺タワー』でした。工具や建設機械を美少女化したというもので、これは相当にやりこんで、ほとんどのキャラクターを集めました。といっても課金はほとんどしておらず、毎日こまめにちょこちょこやって、気長に集めたのでした。それほど課金しなくても結構遊べたと思います。しかし、アップグレードが重なると、新たなアイテムがどんどん増えすぎて、ゲーム性が迷走してしまい、私もつまらなくなって辞めました。課金しなくてもアイテムはそこそこ集められるのですが、置き場所を確保するのに課金しないわけにはいかなさそうになってきたのも一因でした。

 次に手を付けて、これはかなり長く遊んだのは『千年戦争アイギス』でした。ファンタジーな世界観はともかく、タワーディフェンスゲームというのは結構私の好みに合いました。あと、割と課金しなくても、時間をかければ強いユニットもそこそこ揃い、かなり遊べるのも悪くありませんでした。これは多少(といっても4年間で数千円ですが)課金したと思います。麻宮騎亜先生がキャラを描いたのには(しかもエロシーンあり)驚きました(笑)
 あと、2017年ごろだったか、RTSみたいなゲームも一時期それなりにやってましたが、リアルタイムで張り付く必要があって面倒になって辞めてしまったような覚えもあります。
 そして2018年だったか、当時私は非常勤講師として東京外大に出講していましたが、最寄駅の多磨駅のロータリーから外大正門のある通りへ出る交差点のところに、『プリンセスコネクト Re:Dive』というソシャゲのでっかい看板が立っていたんですね。それを見るともなしに見ていたら、そこに描かれた主要キャラの声優の一人に「伊藤美来」さんの名が。当ブログでも過去に取り上げた、『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』の主人公・宇佐美奈々子の中の人ですね。
 というわけで、これも何かの縁だと『プリコネ Re』にも一時期手を出していました。これもほとんど課金はしなかったと思いますが、『アイギス』と並行してちょこまか遊びながらも、結局いまひとつストーリーや世界観に乗り切れず、一年ぐらいで飽きてきました。

 そんなとき、2019年後半から手を付け、2020年はじめまで、かなり熱心にやりこんだソシャゲが、『大航海ユートピア』でした。その名の通り、大航海時代の船長になって、世界を股にかけて交易をしたり、海戦をしたりするゲームです。ゲーム性の点ではかなり面白く、多少の課金もしました(数千円の程度でしたが)。このゲームは、プレイヤーは英・仏・蘭・西・葡のいずれかの国を選び、さらに同じ国の中で「商会」を作って共同してイベントやタスクをクリアしていきます。私はポルトガルを選び、商会に入って、コミュ障の私としては珍しいことに、チャットでお喋りも時にはしたりして、けっこうやりこんだものでした。
 しかし、『大トピ』はそういう凝ったところがかえって日本では支持を得なかったのか(元は香港のゲーム会社が開発しました)、運営も日本向けにキャラクターの絵をリアル風のとアニメ調のと二種類用意するといった配慮はしてましたが(私はゲームの世界観にはこっちの方が合ってる、とリアル調の絵でやってましたが、少数派だったようです)、私がプレイしていた間でもサーバーの統合があったり、チャットでよく見ていた人がいなくなったり、やや低調でした。そこへ船のレベルアップが課金なしでは難しいところまで到達し、ちょっと手詰まりを感じたころから、新型コロナが猖獗を極めるようになってきました。

 新型コロナで大学も急遽、対面の授業をやめてオンラインに切り替えることになりました。しかし急なこととて、2020年4月の段階ではまだオンライン授業の形がどこの大学もまたできておらず、私の勤務先でもとりあえずは課題を出すなど代替措置をとって、オンライン化の準備を急いで進めることになりました。このため、4月の中盤ごろ、本来なら新学期で忙しいはずの時期に数日、予定がないという真空状態に陥ったのでした。
 そんな4月19日、私はしばらく前にコンピュータゲームのプラットフォーム『Steam』で、鉄道ゲームということで買い込んでいた『Railway Empire』に、徒然なるままに手を付けてみたのです。
 二十年ぶりでしょうか。ゲームに夢中になったあまり徹夜してしまったのは。徹夜どころではありません、3日ぐらいほとんど不眠不休でやっていたような気がします。いやもう、無茶苦茶面白い。
 このゲームでは19世紀~20世紀初めのアメリカを舞台に(DLCではほかの地域のもあります)、鉄道会社を設立して町を結んで発展させ、農業や鉱業の資源を町の工場へ運び(農場や鉱山や工場は買収もできる)、利益を上げてライバル会社を圧倒します。3Dで美しく表現された地形の中に線路を敷いていき、そしてこのゲームの特徴と私が思うのは、そこに閉塞信号機を立てる必要がある(シンプルモードではいらないのですが、ここは手をかけて遊びたい)ことです。信号をうまく建てると運行の効率が上がるのですね。そして技術開発して新型機関車を導入し、腕利きの乗務員を雇ってスピード記録を作り、いっそう利益を上げます。さらに、機関車に乗り込んで、自分が作った路線を走って景色を眺めるモードもあり、まこと楽しくて飽きることがありません。
 このゲームは基本的に、シナリオがあってそれを選んでプレイする形式です。各シナリオごとに一ダースくらいのタスクが指示されていて、それをこなしてシナリオをクリアすると、タスクをどれだけ早くしっかりこなしたかで、最上位の会長から下っ端の掃除夫までのランク付けがされます。この難易度もうまくできていて、会長を取るのは程よい難しさです。

 というわけで、オンライン講義が始まるまで一週間ぐらい、文字通り寝食を忘れて打ち込みましたが、さすがに仕事が始まるとこれではやってられないと封印を決意しました。それからは夏休みと春休みに、それぞれ一週間~十日ぐらいやりこんだだけで、授業期間中は封印しています。もっともそれだけしかやっていないのに、プレイ時間は400時間近い……。しかしやりこめばやりこむだけ面白さがあり、それでいてDLCもいくつもあって、あと数年は遊んでいられそうです。
 しかもそのための費用は、ゲーム本体が4千円しなかったと思いますし(ただセール期間中の価格だったかもしれません。セールもよくやってますが)、DLCを集めても1万円にもならなかったと思います。ソシャゲのガチャを何十回か回す費用で、数年の楽しみが保証されるのです。何というコストパフォーマンスの良さでしょう。

 そして一番大きな影響は、『Railway Empire』の面白さにはまった結果、ソシャゲを全部やめられたことです! もちろん寝食を忘れて『Railway Empire』をやっていた間は、ソシャゲには全く手を付けませんでした。
 大事なことを書いてませんでしたが、私は今でもガラケー使いで、スマホを持ってません。自分で意志が弱くてはまりやすいこと承知しているので、SNSやソシャゲにはまらないために、敢えてスマホを持たないことにしているのです。今まで上げたソシャゲは全部パソコンでやってました。まあ、なので世の「ソシャゲを辞めたい人」には参考になりづらい憾みは否定できませんが……。
 で、仕事が忙しくなって『Railway Empire』を封印したら、またお手軽ソシャゲに戻るのかといえば、一度とことん『Railway Empire』をやりこんでしまうと、ソシャゲのちまちましたシステムが面白いと全く思えなくなり、ソシャゲのソーシャルたる要因のイベントなども、自分のペースでゲームをできない不自由さに見方が変わっていました。『Railway Empire』をやりこんでから1年経ちましたが、ソシャゲは二度と手を付けなかったどころか、HDDを圧迫するとDMMのデータは全部削除してしまいました。迷うことはありませんでした。

 というわけで、私が提案するソシャゲのやめ方は、




 やりごたえのある重厚なゲームをとことんやれば、
ソシャゲはバカバカしくなる




 という、きわめて具体性に富んだ、しかし危険な方法なのでした。
 我ながらこれは、毒を以て毒を制すというか、抗生物質発見以前に梅毒を治す手段として用いられたマラリア療法みたいなものだと思います。マラリア療法とは、梅毒患者をわざとマラリアに感染させ、マラリアで高熱を出させるのです。すると高熱で梅毒の病原菌が死にます。それを見計らって、マラリアの特効薬・キニーネを服用させ、マラリアを治します。まことに乱暴極まりない方法ですが、最終手段として戦前は用いられており、発案者はノーベル賞をもらったそうです。

 私の心の中では、マラリアならぬ『Railway Empire』熱はいまだに燃えていますが、長期休暇でもないと安易に手を付けられません。それじゃ普段はどうしているのかというと、これも Steam で軽いゲームを遊んでいます。私がちょくちょくやっているのは、ややこしいのですが、プラットフォームの Steam 上で動いている『Steam』というゲームです(サブタイトルまで入れると、『Steam; Rails to Riches』です)。これも鉄道ゲームですが、もともとボードゲームだったものをコンピュータ化したもので、ひとゲーム30分もかからないくらいです。ボードゲームとしては、『Age of Steam』というゲームの改良版になります。
 これも素敵なゲームで、私は元のボードゲームも買ってしまいました。私が一番好きなボードゲームは、やはり鉄道ゲームの金字塔『1830; Railways & Robber Barons』ですが、それと似たところもありつつ、もっと手軽で、より多くの人と楽しめそうです。ぜひ人と遊んでみたいと思うのですが、しかしコロナ禍の中ではボードゲームの会はとてもできそうにありません。もちろん、Zoom などを使ってオンラインでやることもできなくはありませんし、Steam 上で動く『Steam』(ややこしい)には対人モードもありますが、やはり一日も早い悪疫の終息を願わずにはいられません。

by bokukoui | 2021-04-19 23:59 | 身辺些事 | Comments(2)

Commented at 2021-05-11 16:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 桜井 誠 at 2021-05-23 05:09 x
あんたは、論争に勝利して、何になるんだよ!(激怒!!!!!!!!!)
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