「ランペルール」は積んだまま
松村劭『ナポレオン戦争全史』原書房、昨年末に出たばかりの本です。
「広く浅い」戦史好きとして、ナポレオンものにも興味はありました。今までにヴィゴ=ルシヨン『ナポレオン戦線従軍記』(面白い)だとか、ニコルソン『ナポレオン一八一二年』(これもなかなか)とか、さてこそトルストイ『戦争と平和』(読むのに疲れた。特に最後が)やら、こないだの『女騎兵の手記』やら、一部を扱ったものを多少読んではいましたが、ナポレオニックの全体像は一通り抑えておきたいとかねがね思っていました。そこで店頭で目に付いた時、原書房だし、著者の名前もどこかで見たような気がするし、買ってみたんですね・・・
以下感想を箇条書きで。
<良い点>
・簡単に読める。
・時系列順に網羅してある。
<悪い点>
・記述が平板かつ簡潔過ぎて、正直面白くない。
・地図の出来がはなはだお粗末で見にくい(ニコルソンの本の方が遥かに良い)。
・部隊編成などについて表がなく分かりにくい(これもニコルソンの以下略)。
・本文と地図で地名の表記が一致していない箇所があった。
・初版とはいえ誤植・脱字がえらく多い。
・出典注もなく(これは一般書なので別にいいんだけど)、参考文献が5点しかないのでネタ本探しにも使えない。
・ゲリラが嫌いなのは結構だがその書き方はいかがなものか(他の出来がよければ気にならないんだけど・・・)
・ナポレオンの不倫は彼の戦略と如何なる関連があるのでせうか。
<結論>
戦史研の会報も総力を挙げればこれくらいは書けると思う。
なんか悪口になっちまいましたね。まあ冒頭のロシアとスウェーデンの関係については初めて知ったので、全く意味が無かったわけではありません。
それにまあ、表題の通り「積みゲー」だった光栄の最高傑作とも言われる「ランペルール」(日本製唯一のナポレオン戦争キャンペーンゲーム)に手をつけようかという気くらいにはなりましたしね。マニアからは「なぜ光栄は続編を出さないのか」といわれる本作ですが、日本ではやはりナポレオニックは受けが悪いようです。昔、ボードのシミュレーションが栄えて衰退した頃の俚諺に、「ナポレオンものを出した日本のゲーム会社は必ず潰れる」ってのがあったと、古参の人に聞きましたが・・・光栄だけが例外らしいです。
以下余談。
上の記事を書くために、アマゾンで「ナポレオン」「戦記」などと入れて検索していたら、こんな本がひっかかりました(リンク先18禁につき注意)。
戦雲たちこめるヴェルメラントに来訪したレーナ&ステイシア。そこで彼女たちの見たものは、国家に虐げられる民衆の姿だった。レーナはあらゆる政 (性)戦略を駆使してヴェルメラントの独立を目指すが…。自称、軍事統計分析者の引野利秋が創りだす世界を千之ナイフの濃密なイラストで彩る官能の仮想シミュレーション戦記。・・・「自称、軍事統計分析者」ってなんだよ。
ランペルール、廉価版も出ていた気がするので暇を見つけてやってみようかと思いました。
引野先生、ちょっと調べてみたら東海大SLG研のOBでコミケにも出ているそうじゃないですか。ますます怪しい。
エンゲルス先生も「軍事統計学者」って肩書きがあったような気がします。学者がいるなら分析者(アナリスト?)もいるのです、多分。
エンゲルスは英国在住ですが、彼もガチなミリオタだったみたいですね。
ところで問題なことに、ぐぐってみたらこの本は三十年戦争の女性化エロパロらしいということが判明したのです。
三十年戦争にまともな統計あったんかいな、とは同志緒方が最近書簡中でご指摘ではなかったかと。
原稿については謝る暇があったらランペルールのリプレイでも何でもいいから書いてくださいな。あと、このブログを多分見ているであろうM氏も(戦史研以外の読者の方々、内輪ネタ済みませぬ)。
貴殿に『戦うハプスブルク家』を借りて読んで、「お前はもう読まないだろうからよこせ」などとジャイアニズムな交渉をしていた昔が懐かしいです。結局自分で買いましたが。
そこからすっかりはまって、菊池氏の他の本とか、ヨーロッパ近世戦史の本とかを読むようになりました。お蔭で戦史マニアとして幅が広がったように思います。
アニソンよりもこっちの方が、貴殿から受けた影響としては大きかったかもしれません。でも影響を与えた当人はそのことすっかり忘れている、ままある話ですね(笑)
解説が楽しめるようになってきたとの由ですが、高校時代の書道の時間、半紙に筆で朝鮮半島を描き、貴殿に朝鮮戦争の歴史を講じていた身からすれば、喜ばしいことこの上ありません。