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筆不精者の雑彙

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本朝コスプレ喫茶ことはじめ

 色々忙しさに紛れて失念していましたが、そういえば明後日にはコスチュームカフェ17号店があるというのに何の準備もしていません。夏に準備号を出した本は・・・冬コミには何とかします。申し訳ありません。ペーパーは必ず作ります。

 で、ここ何日か、我ながら狂気のような勢いで様々なことを書いてきましたが、考えてみればこのブログは元々メイドとか制服とかを扱っていたMaIDERiAというサークルの、テキストコンテンツや同人誌を管轄するMaIDERiA出版局のサイトの日常報告として始めたものでした。今ではとてもそうとは思えません。ついでに、MaIDERiA出版局サイトも、段々違う種類のコンテンツに侵食されているような(笑)。トップページにのみアクセス解析をつけていますが、どうも「東京大学オタク物語」の人気が一番高いような気がします。
 ついでに、mixiのあしあと機能を信用する限り、渡辺MaIDERiAプロデューサーは当ブログを週に一度も見てくださっていないようです(泣)
 まあ制服とかメイドとかの話題を碌に書いていないしなあ。しづ子さんところの更新停止以来、最近の「メイド」業界の情報もあまり入手できなくなってしまったし。

 しかしコスカが近いので、今日は一つそっち方面の話題を書きます。最近は「メイド」喫茶に限らず、「執事」喫茶とかも増えてきているようですので、そこで、古文献を読んでいて出会った管見の限り日本最古の、「コスプレ」喫茶らしきお店のお話を紹介したいと思います。
 出典は、1688年に発行された井原西鶴『日本永代蔵』の巻四より「茶の十徳も一度に皆」です。引用元は小学館の日本古典文学全集第40巻『井原西鶴集(3)』(1972初版、1988第16版)です。
 越前の国敦賀の・・・(中略)・・・町はづれに、小橋の利助とて、妻子も持たず口ひとつをその日過にして才覚男、荷ひ茶屋しをらしく拵へ、その身は玉だすきをあげて、くくり袴利根に烏帽子をかしげに被き、人よりはやく市町に出で、「えびすの朝茶」といへば、商人の移り気、咽のかわかぬ人までもこの茶を呑みて、大かた十二文づつなげ入れられ、日ごとの仕合せ、程なく元手出来して、葉茶見世を手広く、その後はあまたの手代をかかへ大問屋となれり。
※語註(出典より抜粋)
荷ひ茶屋:茶釜・茶器などをかついで煎茶を売り歩く商売。一服一銭。
玉だすき~をかしげに被き:恵比須神の服装をまねた主人公の姿。
「えびすの朝茶」:朝恵比須を信仰する町人向けに、主人公がその扮装で売ることから名づける。
十二文づつ:恵比須神への賽銭は十二燈(十二文)が普通。
葉茶見世:煎茶用の葉茶を売る店。
大問屋:敦賀で本問屋と称する一流の大問屋。


 つまり、恵比須のコスプレをして朝茶の行商をしたら、恵比須だけに十二文もみんな払ってくれた(普通は一服一銭なのに)ので、やがて元手が出来て大問屋になったというお話ですね。コスプレによる付加価値をつけることで人々の心を摑み、大きな利益を上げることに成功した、という点で、昨今流行る「コスプレ喫茶」の諸店も、祖と仰ぐべき偉大なパイオニア、とでもいうところでしょうか。

 もっともこの話には続きがあって、というかその部分が本題なのですが、主人公利助はその後「道ならぬ悪心発(おこ)りて」お茶を飲んだ後の茶殻を染料用と偽って買い集め、それを新品のお茶に混ぜて売り、一時は繁盛しますが、天罰が下ったのか「この利助俄に乱人(注:狂人)となりて」、自分で自分の悪事を喋り散らし、ついに体も弱って死んでしまいます。食品偽装表示のさきがけですね。
 さらに利助は死の床でも金銭にすさまじい執着を見せたので、店の者も恐れて近寄らず、死んでからも親類は怖がって遺産を受け取らず(この辺の描写は面白いので、興味を持った人は原文に当たってください)、結局檀那寺の坊主に渡したところ、「これを仏事にはつかはずして、京都にのぼり野郎あそびに打ち込み、又は東山の茶屋のよろこびとぞなれり」・・・あれ、最後はやおいネタで終わってしまいました。
 まあとにかく、現在の「コスプレ喫茶」業態の諸店が、まかり間違ってもこんな発展をしないことを祈ります。西鶴も本篇をこう結んでおりますので。
世間にかはらぬ世をわたるこそ人間なれ。

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by bokukoui | 2006-11-03 23:58 | 制服・メイド | Comments(0)