ジョン・C・ペリー『西へ! アメリカ人の太平洋開拓史』感想
パンナム、減収減益
・・・ちょっと待てい。
パン・アメリカン航空が破綻したのはもう十数年前のことだろうが!?
賢明なる読者の皆様はもうオチが読めたと思いますが、よく見るとその記事はこう書いてあったのでした。
「バンナム、減収減益」
バンダイナムコを略して「バンナム」なんですね。
以上の話は枕で、以下が本題。
この一件で思い出して読んだ、というわけでもないのですが、少し前に読んだジョン・C・ペリー『西へ! アメリカ人の太平洋開拓史』(PHP)の感想など。
この本は昨年古本市で求めたものですが、同じ時に求めたH・G・ガットマン『金ぴか時代のアメリカ』(平凡社)が読んでみたらなかなか面白かったので、一緒に積んであった本書を手に取ってみた、という次第です。
で、ガットマンの本を後回しにして本書を先に記事にするということは、本書がそれだけ面白かった・・・というわけではありません。ガットマン著の方がなかなか読んで思うところが多く、それだけ書評を書くのも面倒なので、イチャモンつけやすい本書を先にしただけです。あとまあ、枕のネタがあったからですね。
そもそも買った時にも書いていますが、出版社がPHPという時点で小生はいささかの懸念を抱きつつも、アメリカ大陸横断鉄道の話が載っているようだったのでまあいいやと思い(類書が少ないので)買ってしまったというところでした。
で、この本は500ページ近くもあるのですが、案外簡単に読めました。文字が大きいので、見た目のページよりも実質は少なかったのかもしれません。
アメリカが太平洋開拓をどのように行ってきたかが綴られている本書ですが、アメリカ中心な見方なのは本書の性格上致し方ないこととはいえ、やや単調なのにいまいちとりとめがない感じで、読後の印象が薄いのです。
アメリカ中心な見方はそれはそれでいいのですが、アメリカが行った諸外交政策の中で太平洋の位置付けがどのように変化したのか、ということが読んでもいまいちピンときません。また、太平洋への進出には交通機関の発達が重要なテーマですが、技術的な側面への注目度はどうも低い感じです。さらに、これはもしかすると訳者の問題なのかもしれませんが、太平洋開拓という地理的な話題を扱っているにもかかわらず碌な地図が載せられておらず、理解をしにくくしています。具体的な数字などのデータも乏しい感があり、流れが摑みづらいですね。
個々のトピック自体には面白い話も多く、枕のパンナムの話はそれなりに載っていて、ここではかのマーチンのチャイナ・クリッパーはじめ技術的な話も結構触れられていましたが、いかんせん索引がないのでそういった話題を活用するのも難しいです。注や参考文献がないのはもうそんなもんだと諦めますが。
そうそう、本来の目的だった鉄道の話ですね。
本書の213ページにこのような一節があります。
アメリカ人同様、初期のカナダの探検者たちも大西洋と太平洋を内陸の水路でつなぐという構想を持っていた。(中略)一九世紀中ごろまでに、イギリスの鉄道愛好者らが大陸横断鉄道の利点を売りこみ始めた。カナダ横断鉄道はとりわけメリットが大きいと思われた。引用者が下線を付した、「イギリスの鉄道愛好家」って何なんでしょう?
・・・原書見てないけど、多分これ、「鉄道敷設ブーム」という意味の railway mania だろうなあ・・・