これぞ我国のうるわしき伝統~警察とエロ
巡査長がわいせつDVD複写=同僚に頼まれ渡す-書類送検、10人処分
証拠品のわいせつDVD複写 巡査長懲戒免職 埼玉県警
というわけで、わいせつ事件の証拠品のDVD(含「児童ポルノ」)を警察がネコババしていたのがばれたという件でした。発覚自体は3月だったようです。おそらく内部告発でしょうね。よっぽど堂々とやっていたので隠しきれなくなったのか。
ところでこの話を聞いて、小生ふと昔読んだ本に書いてあった話を思い出しました。確か城市郎氏の『性の発禁本』(河出文庫)だったと思うんですけど(現在中途半端に片付けてしかも論文作業中のため部屋がカオスなので探してる暇なし)、戦前の発禁王として名を馳せた梅原北明(1900~46)の逸話です。
元々左翼系の出版に携わってロシア革命史の翻訳を出し、後に軟派出版に転じて名を馳せた北明でしたが、名を馳せたもんで日本の官憲に目をつけられ、戦前のこととて上海に逃亡します。そして上海で妖しい雑誌を拵えて日本に送ったと半ば伝説的に語り伝えられているのですが、その上海脱出の旨を読者に告げたビラか何かの文句が皮肉で可笑しかったのでした。
記憶に頼っているので細部が違うかもしれませんが、北明曰く「我々は出版の権限を外国人に譲り渡し、ただの取次ぎ人になりました。ですから、我々が皆様に送った書籍が日本で問題となった場合は、当局はこれを上海に送り返さねばならず、勝手にネコババしたら国際問題になります」とか何とか。
つまり、戦前の警察も、エロ本のネコババをしょっちゅうやってたんですね。で、没収の名目でエロ本をネコババしていく警察の実態をよく知っていた北明は、上海に逃げ出しても意気衰えず、それを逆手にとって警察の身勝手ぶりを嘲笑っていたというわけだったのでした。実際、城氏の本によると、全部警察が押収してあるはずの無い本とか、警察で判子を押したり書き込みをされた本が古書店に出回ることもあるそうで。
戦争に負けても、憲法を改正しても、世紀が変わっても、メディアが進化しても、受け継がれていく日本警察の伝統なのでした。
まあ、他の国でもやってそうだけど・・・。