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筆不精者の雑彙

bokukoui.exblog.jp

月をまたいでだらだらと

 下の記事の続きです(ミスで消したので、こちらを書いてから下を書き直したことになりますが)。
 どうも読み直すとあまりのグダグダっぷりに自分でも嫌気がさしてきてしまうのですが、一旦書き始めた以上一応一区切りいくまで書きましょう。

 結局、小生が日経の記事に感じた違和感というのは、「オタクが鍛え上げた」という捉え方にあるのでしょう。記者のこの見方に対し、小生はむしろネコP社は鉄道趣味者のニーズを摑み(それ自体は悪いことではないが)ブームを煽って読者層を引っ張っていったのではないか、と思うのです。それは同社がもともと自動車趣味の分野で実績を挙げており、そのノウハウを鉄道方面にも巧みに応用したのではないか、とも推測されます。
 何かブームを煽る(ネコP社の場合、「国鉄型」をプッシュしていることが挙げられましょう)ことで読者の興味をつなぐ、というのは、一般の雑誌メディアでは多々見られても、所謂趣味誌ではあまり多くなかったように思うのです。というのも、先日『鉄道ピクトリアル』誌の70年代のバックナンバーを買い込んできた話をしましたが、ちょうどこの時期は国鉄蒸気機関車の末期に当たります(1975年12月本線上から引退)。しかし誌面からは、別に国鉄蒸機をフィーチャーしているというか、特に熱心に追いかけているような感じは全くといっていいほど感じられないのです。

 趣味者側が雑誌を鍛えた、として筆者が想起したのは、『鉄道ピクトリアル』誌創刊間もない半世紀も前のエピソードです。
 雑誌に東武鉄道の車輌解説記事が掲載されました。執筆者は東武鉄道の車輌部長だか課長だかです(実際に書いたのは部下かも知れません)。これがすごい出来栄えで、どれくらいすごいかというと4ページに間違いが百箇所あった(!)というものでした。まあ昔の東武の車輌は種類が多く、番号の付け方がワケワカなことで有名でしたが(関西私鉄では南海が複雑でした。「南海は難解、東武はとーぶん分からん」と当時のマニアは揶揄したそうな)、それにしたってひどすぎる。
 かくて怒った読者の一青年が編集部に抗議にやってきました。
 彼は編集委員に迎えられました。

 読者参加というのはネコP社も熱心で、いやむしろ他誌より取り込みは上手いくらいじゃないかと思います。ただそれが、読者の主体性よりも雑誌側の誘導の方を強く感じてしまうのです。
 ネコ・パブリッシングは経営としては優秀なのでしょう。或いは趣味の同人誌の延長線上に近いものがあった既存の鉄道趣味雑誌に対し、経営と呼べるものを持ち込んだという点では、積極的に評価してしかるべきなのかもしれません。
 しかしそれを、「オタクが鍛えた企業」と評価するのは適当ではありません。今まで一般的な雑誌経営のモデルが適用されていなかった分野に、その経営モデルが浸透した、というだけのことではないでしょうか。
 要するに、「極私的オタク論その2」のコメント欄で緒方氏が指摘してくださった、
「オタク産業」が新しい生産や分配や交換の理論を生んでいるようにも見えませんし、「オタク産業」の技術や商品が社会のあらゆる分野に浸透していき社会を大幅に変えているようにも見えません。
 ということは、一つの趣味分野の実例から見直すと相当に納得できる指摘であろうということです。従って該当日経記事での「オタク」と「オタク産業」への位置付けは承服できない次第です。
 まあ結局は、日経新聞の提灯記事なんか真に受けんなよ、ということになるのでしょう。いやはや。

 日経新聞で思い出しましたが、めでたく31日付朝刊で渡辺淳一センセイの「愛の流刑地」が完結致しました。
 ヘタレなオタクの妄想よりもある意味さらに逝っちゃった、自己中心的男根主義のダダ漏れをやっている人間が世間で立派な小説家であると評されている、ということを認識させられて朝から鬱になることもなくなるかと思うと、嬉しくなくもないような気も少しはします。
 まあ、ヘタレオタクと渡辺センセイ(のようなオヤジども)の発想の根っこは結構同じじゃないかと思いますけどね。

 というわけで、小生は今フェミニズムの本を読んでいるのでした。勁草書房セールで調子に乗って買い込んだ本を片付け中。
 あ、初めて読んだまともな小説が北杜夫氏の作品だった身としては、今月の「私の履歴書」は楽しみでした、はい。
Commented by 労働収容所 at 2006-02-01 22:14 x
本文の内容とは外れますがふと思った事を。
レイルマガジンが国鉄型をプッシュするということは墨東さんの趣味にはあまり合わないのではないでしょうか。あるいは合わないけどやっぱり読んじゃうもんなのでしょうか。

私の適当極まるコメントも日経の提灯記事程度に受け取っておいて下さい。

日経社会面の4コマの最期のネタは私の履歴書でした。
そんな思い出。
個人的に一番好きなのはドラッカーの時の「君は新大陸に行ったならず者たちとは違うんだから」という一節ですね。ドラッカーの祖先は二次大戦の時にオランダ本国から米国へ移住したはずです。
そんなお話。
Commented by bokukoui at 2006-02-02 21:31
流石のコメンテーターも鉄道ネタが続くとコメントに苦しまれるようで済みません。

ネコのプッシュしたがる「国鉄型」は、実際小生の趣味には合ってません。小生は鉄道趣味者の中で比較的少数派の私鉄歴史系あたりに属していますので。もっともネコがそっちを等閑に付しているわけではないんですけど、なんとなく読むのに抵抗があったりします。

「私の履歴書」といえば、ガルブレイスのお手伝いさんの話が印象に残っています。
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by bokukoui | 2006-02-01 03:21 | 思い付き | Comments(2)