ヘンリー・ダーガー展についてちょこっと(あと2日なので)
・・・故大平総理のように唸っているだけなのも芸がないのでちょこっと。
いつぞやの記事で行くつもりと書いた原美術館のヘンリー・ダーガー展「ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語―夢の楽園」、会期がいよいよ16日までとあと二日に迫ってきました。
で、実は小生既に行ってきたのです。論文その他で忙しかったのですが、割と近所に用事で出かけたついでに。率直に言って、事前に予期していたよりも結構面白かったので良かったのですが、感想をきちんと書いている暇がありません。ですが、まだ会期があるうちにちょこっとだけ書いておきたいことがあるので、とりあえず感想の完全版はまた論文終了後書くとして、一つだけ。
事前に予期、ってのは、ヘンリー・ダーガーという人は他人に見せるなんてことを全く考えず、ただ自分のために作品を創っていたのだから、見ても訳が分からず共感も出来そうにないところが面白そう、と思っていたわけです。
ところが一枚の展示を見て、それが結構偏見だったと気がつきました。
それは実物ではなく、ダーガーの描いたものを写真で撮って引き伸ばしたものでしたが、明らかに地図でした。四囲に方位が書き込まれ、なにやら地形らしきものが描かれています。しかし黒と赤の二色だけ(多分鉛筆?)のものなので、あんまり観覧者の注目を集めていませんでした。展示位置も部屋の端っこで、隙間があったから張ってみましたみたいな感じで、何ら説明もキャプションもついていなかった(まあこれは他の展示物も大体そうだったけど)ので。
で、他の観覧者はそれを見て、「なんだろうこれ」とか言ってるのですが、それはダーガーの作品『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子ども奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』の戦況図だろうとすぐ分かりました。自分も同じような妄想架空戦況図を書いたこと数知れず、だったからです。赤鉛筆で描かれていたのは敵軍でしょう(仮想敵を赤で書く軍隊の習慣をダーガーは知っていたんでしょうか? 単に赤鉛筆で書いただけだと思うけど)。
ケバで高地が描かれ、また川が描き込まれていて、しかし他の表現を端折っているところがいかにも戦況図的です。高地に「〇〇 RIDGE」とか「〇〇 HILL」なんていちいち書き込まれていて、そういえば南北戦争のゲティスバーグ戦況図には「セメタリー・リッジ」だとか「カプルス・ヒル」なんて地名があったなあ、と見ていて頷きました。川らしきものには「〇〇 RUN」と書いてあったのですが、帰宅してから手持ちの南北戦争の資料を見たら、川は「ピッツァーズ・ラン」などと書かれていて、なるほどと納得しました。
こんな地図なら、今までの人生で
ご多分に漏れず斎藤環先生の『戦闘美少女の精神分析』を読んでダーガーを知った口ですが、「美少女」だけでなく「戦闘」の方にもそっと力点を置いてダーガーを見直すと新しい発見があるかも、なんて妄想しました。
で、何がいいたいかというと、労働収容所組合氏がご自身のブログにて、妄想を書いている自分のブログに比し小生のブログは事実に基づいているとご批判をされたので、それに対し弁明を試みたのが本稿の目的です。是非ラーゲリ氏にダーガー展を閲覧していただき、ダーガーが作品中にコラージュした米兵(多分)が持っている拳銃の形式を特定していただければ望外の喜びであります。
もそっと真面目な感想文は、論文終了後に書ければいいな・・・。

仮に批判だといたしまして、批判は事実に対して為されるものなのですから、どちらにせよ事実に基づいているという意味において変わりはありません。ご自身で事実に基づいた記事内容であることを補強されたと感じます。
もちろん賞賛の意を込めて述べたのは言うまでもありません。
河豚がなぜ一番旨いかといえば味がないからだ、と北大路魯山人は喝破しましたが、究極の文章もまた意味や情報なんぞはノイズではないかと思ってもみたりするわけです。
まあ要はですね、ダーガー展は面白かったです。そしてダーガー展を見て幾つかこれと同じ様な感興を受けたコンテンツを思ったとき、貴殿のブログと銀茄子氏の画業を思い出したと、まあそういうことなんです。
