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筆不精者の雑彙

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極私的オタク論その4・「鉄オタ」「軍オタ」という表現について

 今日は鬱々と14時間くらい寝ていました。今後も記録に挑戦したいと思います。

 さて、昨日の記事で「鉄道趣味者や軍事マニアは「オタク」に包含されるのかされないのか、包含するかしないかは論者の如何なる立場によって変化するのか」などと書いたことに対して、Ta283さんより「私は自分が兵器ヲタクだと思っているのですが・・・違うのでしょうか?」という御意見が寄せられました。この点については今後考えてゆくつもりでしたが、とりあえず現時点での小生の意見を表明しておきます。

 当ブログの旧稿「『萌え』の魔の手に気をつけろ」および「極私的オタク論その1」で既に述べたことですが、鉄道や軍事のマニアは趣味の対象としているものとマニアな人々との間に商業的関係がない(少ない)という点で、所謂アキハバラ系の「オタク」と大きな差異があるように思います。
 この点、昔の「特撮マニア」も、おそらくコンテンツ供給側の主たる想定顧客(お子様)とマニアとがずれている、という点では似ていたのではないかと思います。或いは「映画マニア」についても、映画会社の収入の大部分を占める一般顧客層とは別個な、少数で特異な嗜好を持った消費者(そればかり相手にしていては算盤が立たない)層を指していたのでないかと思うのですが、小生は斯界に知識が乏しいので、勝手な思い込みかもしれません。

 このように、供給サイドの「想定外」の受容をする連中が(「供給サイド」というものを想定することすらできないような対象を受容する連中が)、そもそもマニアと呼ばれていたのであろうと思います。1980年代後半以降はオタク(当時は「おたく」か)という表現も(宮崎事件とも相俟って)使われるようになりますが、その際はマニアとかなり似たように使われていました。しかし同じ意味だったわけではありません。
 1990年代前半、当時リアル厨房だった小生は、中学で鉄研に所属していましたが、そこでの自称は「鉄道おたく」ではなく「鉄道マニア」でした。前者はいささか侮蔑的なニュアンスを有しているように感じられたものです。「おたく」というのは、マニアの中でもアニメ、ゲームあたりを中心とした趣味の連中に対し揶揄する(その趣味そのものへの批難と、その趣味をやっている特定の個人への批判と、両義あるはずなのですが、ごっちゃにされていくのは世の習い)含意をもった文脈で使っていたような記憶があります。

 長くなりそうなので日付が変わる前にひとまずアップ。まだ本題に入ってませんね(苦笑)

※追記:続きはこっち
Commented by 労働収容所 at 2006-02-08 02:59 x
では本題に入られる前に私事をツラツラと。
私が若い時分は「おたく」と「マニア」ではなく「マニア」と「本職=軍人」を使い分けていました。そして「マニア」に対して侮蔑的なニュアンスを感じていました。ちなみに「おたく」という表現は極めて狭い意味、つまりアニヲタのごとき意味でとらえていました。
これは私が軍隊の内と外のみで区別していたということに起因すると思われます。軍人・軍属とその観察者という具合に分けていたのです。そして観察者の中でも単なる愛好者のことを「マニア」と呼んでいました。だから私は「マニア」を興味が有るくせに実際に関わろうとしない腰抜野郎として軽蔑していたものです。

実は未だに私はこの感覚を持っています。ですからどうしても私は戦史研が軍隊=自衛隊と関わるべきだと考えてしまうのです。どうかお許し下さい。
Commented by Ta283 at 2006-02-08 09:42 x
私の場合は複雑になるのです。
軍事ヲタクになったのは30年前の小学生の頃
もちろん、「おたく」なる言葉すらありませんでした。
「○○マニア」「○○キチ」と呼ばれていた時代でした
その後(宮崎事件以降)、「オタク」という言葉が出てきました。
最初は「アニメ・コミックマニア」を「オタク」と言っていたはずですが、一気に範囲が広がって「軍ヲタ」なるものが登場したと思うのです。
「軍ヲタ」=「軍事マニア」でもかまわないと思うのですけどね。

もう一つ、軍(自衛隊)の中にいる人と外にいる人の関係
これも私にとっては複雑なのです。
前に勤めていた会社は「自衛隊装備品」も作っている会社でした。
当然のこと私も「自衛隊装備品」も作ってました
私の場合は好きでやっていた仕事でしたが社員の中には「まったく興味なし」の人も多かったです
(単に電子関係の会社だからというだけで就職した人が多いです)
この場合は中の人と外の人の中間に位置するという複雑な事になるのであります。

あくまで独り言ですが・・・。
Commented by bokukoui at 2006-02-09 02:10
>ラーゲリ緒方氏
小生は、実際に関るのではない観察者という存在にも一定の価値があるものと考えております。ことに軍事の場合、軍隊と関ることにのみ価値を見出すということは、軍事に関ることは本職のみで独占されるべきものであるという、民主主義国家としては危険な結論に至る危険性に繋がるのではないかと危惧します。この点では、貴殿のご意見とは全く異なる見解を抱いているということをご承知おきください。
戦史研の方針については、昨年後半に議論したかと思います。簡潔に繰り返せば、自衛隊という個別具体的事例に特化して関与することは、「戦史」の持つ歴史的地域的可能性を狭めてしまうのではないかということを懸念している、ということを申し上げたいのです。ただ、今更具体的な会の方針に口出しをすることはありませんので、その点はご心配なきよう。
Commented by bokukoui at 2006-02-09 02:11
>Ta238氏
おいおい書くつもりですが、一気に広まって「オタク」(「おたく」ではなく・・・と大塚英志氏に倣って区別してみます)、という言葉が広まり「マニア」を駆逐した結果、あまり意識せずに「軍オタ」という言葉を「軍事マニア」の代替で使うようになってしまったけれど、その結果その言葉のもつ微妙なニュアンスの違いが「軍事マニア」と「軍オタ」の間にある種の差異を作り出していったのではないか、ことに現在、「オタク」という言葉にかぶせられる文脈をどうするかが「オタク産業」の「発展」によって様々なアクターの間で問題になっており(『オタクエリート』が分かりやすい例ですが)、その議論から阻害されやすい「軍オタ」(「鉄オタ」も)は自分たちのアイデンティティを再確認しておく意義が一定あるのではないか、そのような問題意識を持っています。そのことは、該趣味活動の今後の展開をより実り多きものにする上でも全く意味がないわけではなかろうと考えております。
Commented by bokukoui at 2006-02-09 02:11
上の続きです。



「中の人と外の人の中間に位置する」という立ち位置は大変興味深いですね。さらに周囲の「まったく興味なし」方々との間で、いろいろとご苦労もされたのではないかと思います。貴重なご経験ですから、その職場を離れられたことを奇貨として、ご経験をなんらかの形で纏められるのも意義があるのではないかと思います。

以上二件、若輩者の僭越な発言をお許しください。
Commented by 労働収容所 at 2006-02-09 09:18 x
お気付きかとは思いますが、私は観察者=マニアと捉えていた訳ではありません(むしろかなり早い段階から「軍事学者」志望でしたから)。今になって思えば関わるか関わらないかで区別していたのではなく、「観客」と「批評家」のごとき感覚でマニアと非マニアを呼び分けていたのかもしれません。
また「軍事」のような広い範囲についてではなく、「軍隊」「兵器」のような比較的狭い範囲についての「マニア性」に言及していたとご理解下さい。ですからもし「軍ヲタ」という言葉を小学生の私が使ったとしたら、それは「軍事オタク」ではなく「軍隊オタク」の意味で使っていたと思われます。
所謂軍人が「軍事専門家」や「戦争の指導者」に最適格かについては疑問ですが、何であるにせよ身近な(そして一定以上の規模を持つ)軍事組織としては自衛隊くらいしか無いのが現状です。ちなみに在日米軍は親しみを感じないので私にとっては身近ではありませんよ(よく見学には行ってますが)。
Commented by 労働収容所 at 2006-02-09 09:22 x
(続き)
諸々含めて承知しているつもりではありますが、自衛隊の一士官に思索を引き摺られるとしたらそれまでの人間だったと思うことにもしています。結局自衛隊との関わりは私の独断専行に依る所が大きく、「戦史研」の名前を勝手に利用したという側面は否定出来ませんが、「会の方針」と呼ばれるほどに成長してくれたならそれはそれで有りかなと思ったりしてみたり。あるいは私の「私物化路線」が残念なことに成功してしまったのでしょうか。

Ta283氏。
私の拙い話に彩りを添えて下さり、感謝の念にたえません。
Commented by 意宇鉄主 at 2007-04-21 00:07 x
 とにかく歴史捏造に加担するものはヲタク以上の下劣さがあるということには賛同いただければと思います。
Commented by bokukoui at 2007-04-23 21:10
>意宇鉄主さま
はじめまして、コメントありがとうございます。
本文では「歴史捏造」といったことには触れておりませんので(他の記事でもあまり触れた覚えがないのですが)、コメントのご趣旨を読み違えているやも知れませんが、別段「ヲタク」を下劣というつもりはありません。続きの記事でその旨は書きましたので、ご諒解いただければありがたく存じます。
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by bokukoui | 2006-02-07 23:58 | 思い付き | Comments(9)