「マンガ論争勃発番外編-表現の自由と覚悟を問う」レポ(4)
昼間氏
「ネットの政治的な使用法はどうか。2ちゃんの『工作員』みたいなのは実際にいるのか」
荻上氏
「いる」
松浦氏
「それについては今、保坂展人氏が調べている」
昼間氏
「しかし、成果はどうか」
荻上氏
「ない。議論をしてもそんなに人の意見は変わらない。むしろ自分の意見を強化する。2ちゃんのスレを見るのは精々数百人、まあ数を集めて『痛いニュース』にでも乗れば十万PVとかなるが、しかし結局それでどんな効果があるのか。
ネットを使うとすれば、ある話題が好ましくないときに他の話題を持ち出して攪乱するか、攻撃対象にとって都合の悪いこと(政治家の失言など)をしつっこくコピペで張って思い出させるか、攪乱か継続か二つしかない。だがこれは昔のネット以前のやり方と変わらない。ネットでマーケティングが変わったというが、結局一番最初の消費者を捉える導入部分は変わっていないので、大きく変わったわけではない」
昼間氏
「ネット、ブログのコメント欄での議論に意味はあるのか。直接会わないとダメではないか」
荻上氏
「チャンネルの使い分けだろう。ブログのコメント欄で丁寧に応対するのも一つの主義としてはいいが、運動論としてはアウト」
昼間氏
「『マンガ論争勃発』のブログはコメント欄を閉じている」
荻上氏
「それがいいと思う」
○ここで議論がちょっとグダグダに。増田氏がロフトのネット掲示板での思い出を語って昼間氏をいじり、荻上氏が議論の内容に意味はない、コミュニケーションすること自体に意味がある「毛づくろいコミュニケーション」というのもある、と指摘、「でも動物も毛づくろいしないとストレスで死んじゃうんで、そういうのも必要なんです」と説明。
昼間氏
「結局、目的意識がないとネットの書き込みもダメ。ネットの馴れ合いということで mixi から Twitter へと、毛づくろいコミュニケーションができた。チャンネルの使い分け」
荻上氏
「2ちゃんはスレを立てた『1』がアジェンダを作って、それに皆が乗って議論が進む。mixi のニュースでもニュースを元に話が進む」
○ここでさらに話題はグダグダになり、昼間氏の過去が増田氏によって暴かれる。昼間氏はかつて左翼系掲示板で「エキセントリックに」暴れており、氏のアンチスレが2ちゃんにはなおも存在するとか。その後氏は mixi を始めたところ、打って変わって「一緒におそばを食べに行く女性を募集」などと書き、増田氏をずっこけさせた由。昼間氏のネットネタでひとしきり盛り上がり、氏がネットで「シャツの柄の趣味が悪い」と書かれたことが暴露され、あまつさえ今日もユニクロのシャツだと開き直る昼間氏。
グダグダになったので、昼間氏は立て直そうと、氏がFAXを送ったのに応えて来てくれた飛び込みゲストの紹介に。
昼間氏
「まず、赤木智弘さんをご紹介します。(註:赤木氏の著述活動の紹介は本レポ(1)冒頭及びそのリンク先をご参照下さい)・・・赤木さん、先月の花見以来ですね。赤木さんはすごいオタクだそうですが」
赤木氏
「いえ、そんなことはありません」
昼間氏
「赤木さんの下層問題と、オタク的な児ポ法などとのつながりは。先日はあまり・・・」
赤木氏
「そうですね。花見の時は徹夜明けで、ボーッとしていたもので何をお話ししたか覚えていなくて・・・」
○ここで言う「花見」とは、小生も参加して赤木氏にお話を伺った、こちらのお花見のことです。しかしこの会場にいた聴衆で、昼間・赤木両氏の他にその花見のことを知っているのは小生しかいなかったんではないかと思います(苦笑)。
で、そんな話から入ったので場が緩み、ちょっと空気がまったりしたところで、突如春日家にしん氏が乱入。春日家にしん氏は、『涼宮ハルヒの憂鬱』の熱狂的ファンで、同作品のアニメのOPだかEDだかの際に登場人物が踊っていたダンスを実際に踊る、「ハルヒダンス」なるパフォーマンスで知られた方で、「SOS団三次元支部」を組織したそうです。
小生、春日家にしん氏の名を存じ上げたのは、とかく物議を醸した昨年6月30日の「秋葉原解放デモ」の際のことでした。あのデモに約450人もの人がどのような経緯で集まったのかという最も重要な問題点は、爾後のネットでの批難の嵐の前に何処かへ消え去ってしまいましたが、デモのその後のゴタゴタの際「SOS団三次元支部」関係者は殆ど話題に上らなかった存在とはいえ、春日家にしん氏率いる「SOS団三次元支部」の関係者が少なからぬ――ことによれば最大の――人数を集めていたことは確かです(その一員としてデモに参加された方の記事に再度リンクしておきます。デモで演説する春日家にしん氏の写真があります)。あのデモの日、ハルヒ関係者の多さに友人板東α氏のメットへ「ハルヒ厨粉砕」と書いた者としては、いささか思い複雑な再会でした。氏のデモ後の動静について小生はたまに mixi で拝見しておりましたが、昨年末に「西宮へハルヒに会いに行く」と宣言して mixi も退会されてしまったので、それ以降のことは存じませんでした。ここはひとまず、氏が「消失」してしまわずにご健在であったことを素直に言祝ぎ申し上ぐるのがひとのみちというものでありましょう。
春日家にしん氏
「昼間さんの司会は酷い。だいたい『萌え』が足りないんですよ『萌え』が!」
○春日家にしん氏、昼間氏に絡みます。そこですかさずスクリーンが降りてビデオが・・・となるはずが段取り悪くもたつき、昼間氏さらにいじられます。
荻上氏
「暗い話ばかりも何なので、オタク文化の明るい面を彼に」
○壇上で一番若いのに一番大人な合いの手を入れる荻上氏。ビデオもやっと流れます。
春日家にしん氏、壇の前で踊りの途中、勢い余って客席最前列中央のテーブル、とは即ち赤木氏のテーブルの上にあったジョッキをひっくり返したのはご愛敬。ジョッキが空っぽで不幸中の幸いでした。
踊りが終わって、赤木氏「何を話せばいいか分からないのですが」と繰り返しつつも壇上へ。
昼間氏
「オタク文化にもコミットしておられるようだが」
赤木氏
「自分は地方出身で娯楽が無かった。友達と遊ぶかオタクくらいしかない」
○赤木氏、スーパーファミコンやゲームセンターについて語り、場が割とまったりに。増田氏、昼間氏に「あんたは人を好きか嫌いかで判断するだろ」などと突っ込む。すると先程来、壇上の反対側から(この時、壇上は客席から見て左から赤木-昼間-増田-松浦-荻上-永山と並んでいた)口を挟みたそうにしていた荻上氏が発言。
荻上氏
「赤木さんがなぜ今日このイベントに来たのか話してもらい、そこからご自分の方向と結びつけて語って欲しい。そうすると話が分かりやすい」
赤木氏
「来たのはたまたまで、友人と焼肉をするので上京するつもりだったところ、昼間氏からFAXが来たので・・・」
○と、赤木氏が壇上に現れたのを聞きつけたのか、ロフトの店長・平野氏が登場。会場の後ろから発言。平野氏は赤木氏に並々ならぬ関心をお持ちのご様子。
平野氏
「赤木君の意見が僕は未だに分からない。青春は何でもあって失う物なんかなくて、それがあとの財産になる。僕はそう思ってる。僕は革命のために死んでもいいと思ってて、それが63の今でも力になってる。なのにあなたは絶望しかないという。自分の若い頃は高度経済成長の頃だったが、希望がなかったら生きられなかったと思う。そこで溝が埋められない。そこについて、あなたから僕に反論して欲しい」
赤木氏
「高度成長期のように社会が成長しておらず、だから素直に希望と言えない。『自分たち』は普通の道を進んでいくのではダメ、と思ってしまう」
平野氏
「赤木論文を読んで、破壊から創造へということかと思ったが、あなたの戦争には絶望しかないんじゃないのか」
○平野氏と赤木氏のやりとりに、壇上の他の人からツッコミが入ります。
増田氏
「俺の周りで役者とかなんだとかやってる連中だって、絶望ばっかりだよ。金がない。平野さんは商売人だから」
永山氏
「冗談抜きで金の問題は大事。マンガ論争の本の仕事だって、その間他の仕事ができず、金銭的には儲からなかった。黙れ!!!ブルジョワ経営者!!」
○正確な文言は、声が大きすぎてかえって覚えていませんが(情報求む)、とにかく、大声で平野氏を罵倒する永山氏。
平野氏
「でも、将来のためになるのだと思う」
増田氏
「その一点では確かに希望を持っている」
○永山氏の怒声で一つの山場を越え、議論はひとまず収束して質疑へ。
NGO・AMIの方(ダニエル氏ではない。お名前失念)
「運動論について質問。どういう方法がよいのか、献金の効果はあるのか」
松浦氏
「献金で物は言いやすくなるが、その議員は動くのかどうか。限られた時間の中、様々な要請があるなかで、小さいものは払い損になるのでは。また必ずしも金額の問題ではない」
○ここで、遅れて駆けつけた楠正憲氏(MIAUの会合に出られていた由)が発言。
楠氏
「プロのロビイストとして。お金をあげて何かしてもらうと受託収賄になる。ただ、自分の聞いた話では、議員にはちゃんと会って筋を通せば話を聞いてくれる。筋の通らない話をするときはお金がいるのかも知れないが」
○ここで、楠氏がマイクロソフトの技術統括室CTO補佐という方であることから、マイクロソフトが日本ユニセフ協会のキャンペーンに賛同していることに対して質問が出ました。
楠氏はこの質問に返答されましたが、その内容はオフレコということですので伏せさせていただきます。ただ、会場はおおむねその返答で納得した、とは言えるかと思います。参考までに楠氏ご自身のブログでの記述にリンクしておきます。
質問者(お名前失念)
「国会で吉田泉議員が児ポ法改定について疑問点を指摘する質問をしたが、これにはどういった背景があるのか」
松浦氏
「この問題では民主党のプロジェクトチームで研究を重ねてきた。そのことがあるのでは。基本的には何の問題を取り上げるのかは個人の考え」
質問者
「これによってロビー活動に何か変化が起こったか」
松浦氏
「特に変わらない。吉田議員はメールをもらって喜んだそうだが(註:このことはここでどなたかが発言されたのですが、松浦氏ではなかったかも)」
○いよいよ締めくくり、ということで壇上の各人が一言づつ。
永山氏
「5月16日に和光大学で講演会をやる。部外者も参加して構わないと思うので・・・え? ま、うまく天ぷらしてください」
増田氏(?)
「今時天ぷらなんて言わないぞ(註:天ぷらとはモグリで講義を受けること)」
永山氏
「今日は僕自身も面白く、叫んでストレス発散もできた」
荻上氏
「6月に学校裏サイトの本を出す予定。既存の議論の誤りを突く。駄目な議論を今後どうキャンセルするか」
松浦氏
「是非皆さんに国会に来て欲しい。どういう状況でどう議論が行われているのか、肌で感じて欲しい。議員は公僕なのでどしどし使って下さい。情報やアイデアがあればよろしく」
増田氏
「明日(註:5月2日)イベントをやる。また、今日は『新・スパイガール大作戦』の監督(?)と女優の神楽坂恵が来ている」
監督(他の仕事の方だったかも)と女優さん紹介。その他増田氏は何点か告知を(詳細メモらずたびたび済みません監督)。
赤木氏
「聴衆の皆さんも、自分も、こうした問題に皆で声を上げよう」
昼間氏
「この場所でのイベントはここで終わりますが、まだ話したい方は朝まで店が取ってあるのでそちらで」
○こんなところで、長きにわたったイベントは終わりました。
小生は所用少なからず、また徹夜で呑んで話す体力もありそうにないところから、永山さんにご挨拶だけして撤収しました。
そうそう、帰りがけの時、店長平野さんが赤木氏を呼び止め、次のイベントをしようというような話を熱心に持ちかけられていました。もしかするとロフトで近く赤木氏のイベントがあるのかも知れませんね。
で、あまりといえばあまりに長いレポに読者の方もうんざりされたかと思いますが(読んでいただいた方ありがとうございます)、書いた人間も疲れたので自分の感想はまた次の記事に。