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筆不精者の雑彙

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碓氷峠の鉄道文化財について思い出したこと

 前回の記事で、岩手・宮城内陸地震から一ヶ月ということで、この地震で亡くなった岸由一郎さんのことについてなど書きましたが、実は昨日、岸さんを偲ぶ会がありまして、小生も末席に連ねさせていただきました。改めて喪ったことの大きさを感じた一夜でした。
 いろいろと故人の業績に関係したお話をその場で伺ったのですが、一緒に仕事をしていた方々の無念の言葉はまだあまりに生々しく、このような場で書くことはまったくふさわしくありませんので、今は小生の心にとどめておくことにします。

 その代わり、といっては何ですが、最近世界遺産に落書した日本人観光客のことが世間を騒がせたこととも関係して、日本における遺跡と落書について。
 少し前のことですが、友人と一日出かけ、碓氷峠の信越本線廃線跡など見てきたときの写真です。
碓氷峠の鉄道文化財について思い出したこと_f0030574_2352772.jpg
碓氷峠の有名な煉瓦アーチ橋

 これは有名な橋なので、皆さんもご存知かと思います。
 で、この橋は観光地として整備され、横に道と階段があって橋に登れるようになっているのですが、その途中道が橋脚の横を通るところは・・・
碓氷峠の鉄道文化財について思い出したこと_f0030574_2374339.jpg
落書だらけの煉瓦の橋脚

 この写真はクリックすると拡大します。落書の状況が良く分かろうかと思います。 
 一枚目の写真の黒丸のところには、落書を戒めるこんな看板が立てられています。
碓氷峠の鉄道文化財について思い出したこと_f0030574_2311572.jpg
 しかし効果はどうなのでしょうか。
 落書といいつつ、実際にはこれは煉瓦を尖ったもので削ったり彫ったりしているため、消すことも出来ません。パテか何かで埋めることは出来るかもしれませんが、それは原状をかなり損なってしまうともいえます。壁で囲ってしまえば話は簡単ですが、このような構造物を身近に感じる機会を失ってしまいます。煉瓦は積み方や目地の工法なども見る点ですから、なるべく近くで、触ったりして観察できた方が望ましいんですよね(煉瓦の積み方の話とかはこのブログで前にやりましたな)。

 この近所(というほど近くも無いが)の富岡製糸場(ここも前に結構細かく見る機会がありました)は世界遺産登録を目指しており、その際関連する近代遺跡ということで、この信越線の煉瓦アーチ橋も入っているそうです。「世界遺産」になっても、いやここはなってませんけど(個人的には日本ローカル文化の平泉より、非西欧が西欧近代技術を取り入れて世界の産業に重きをなしたという点で、富岡の方が世界的普遍性を有すると思うのですが・・・)、観光地化するということはこのような問題を避けて通れないのでしょう。
 で、その対策は、・・・地道な教育しかないのでしょうか。でも通じない馬鹿者は一定数いるわけで・・・うーん。



 以下はのんびりとしたおまけ画像など。


 この橋に続く廃線跡はトンネルに繋がっています。トンネルももちろん煉瓦造りで(一部セメントで補修されているところもありますが)、なかなかいい雰囲気。
 フラッシュを焚かないで写真を撮ったら、こんな感じになりました。
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 同じ煉瓦でも、こちらは落書は目に付きませんでした。まあ暗いからなんでしょうが。

 碓氷峠といえば、かつては機関車を増結して登っていた急勾配で有名で、その時列車が峠のふもとの横川駅と上の軽井沢で数分停車することから、横川駅では駅弁「峠の釜めし」が有名でした。この駅弁を売っている「おぎのや」は、松井田町最大の産業だったともいいますが、今でもドライブイン業としては盛業中のようです(新幹線とかで駅弁は売ってます)。
 で、我々も碓氷峠に行く途中、おぎのやのドライブインに立ち寄り、釜めしなど食したのですが、食べれば当然陶器の釜が残ります。持って帰って記念にしてもいいのですが、まあ邪魔だというときは返却します。元々ドライブインの食堂ですから、食器返却口はありますので、そこに返せばいいわけです。
 こんな感じ。この写真はクリックすると拡大します。
碓氷峠の鉄道文化財について思い出したこと_f0030574_23404594.jpg
 ちゃんと釜の絵が描いてあったことに感心した次第。
Commented by 鈴木光太郎 at 2008-07-17 01:56 x
今晩は。
大事な遺産を残そうと思うなら、世界遺産のお札なんか無くても、地元が集めた碓氷峠の資料をNETで無料公開すれば、
興味のある人は来るし、興味の少ない人はネットを見るだけでも良さを味わえるのですが。
http://www.flickr.com/photos/kotaroooo/2674732910/
↑建設中の写真
世界遺産→TVで全国放映→観光客増加→落書き多発の流れですか。
橋脚の回りに高さ3mで新たに、昔っぽいレンガを巻けば良いかも知れませんね。
Commented by 無名 at 2008-07-17 10:04 x
落書きはどこの国、地域でも問題となっています。
ただ、日本人はまだ手癖がマシなほうなので救いがあるかと・・・。
Commented by 憑かれた大学隠棲 at 2008-07-17 22:13 x
千社札うざいw
Commented by bokukoui at 2008-07-18 13:00
>鈴木光太郎さま
コメント有り難うございます。毎度興味深い写真もご紹介頂き、感謝に堪えません。

このような遺産を観光に活用する場合、このような問題はついて廻るのは避けられませんね。上に煉瓦を巻くのも一案ですが、原形を損なってしまっては本末転倒とも思われますし(実際の観光開発では、間々あることのようですが)。

>無名さま
500年前、アンコールワットに落書きした日本人などおりましたが(笑)、世界的にはこれでもましな方なのでしょうか。

>憑かれた大学隠棲氏
それ自体が商売になったからなんでしょうかね。
Commented by 無名 at 2008-07-18 14:59 x
スーベニア気取りで遺跡を破壊して自宅に持ち帰らない分、かなりマシです。
ポンペイなどの欧州の遺跡は今も猶、盗難と破壊の危機にさらされています。
Commented by 憑かれた大学隠棲 at 2008-07-18 22:43 x
要約すると、大英博物館自重wwww
というとこで
Commented by bokukoui at 2008-07-20 20:30
>無名さま
なるほど、お持ち帰りという事例は、日本ではそれほど聞かないですね。
森の石松の墓石を削って持っていく、なんて話はありましたけど(笑)

>憑かれた大学隠棲氏
自分たちが持って帰ったから残ったんだ、とか言い出すだろうなあ。
まあ古代ギリシャ遺跡なんかは、イギリス人の方が熱心とも聞きますし。
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by bokukoui | 2008-07-16 23:09 | 鉄道(歴史方面) | Comments(7)