『月刊COMICリュウ』10月号の速水螺旋人「螺子の囁き」について
で、せっかくタグまで作った割に、ちっとも更新していない『COMICリュウ』の話ですが、うっかりしているうちに次の発売日が目前にまで迫ってきたので、急遽一つ。もちろん、ナヲコ先生の「なずなのねいろ」はじめ掲載された漫画作品について書きたいのですが、それ以上に先月発売だった10月号には驚くべき記事がありましたのでまずその話を。
それは速水螺旋人氏のイラストコラム「螺子の囁き」ですが、なんと今回のお題が
ロシアの蒸気機関車「E形SL」
だったので、これはもう驚いた次第。
以前、速水氏の作品について書いた、単行本『速水螺旋人の馬車馬大作戦』と、この「螺子の囁き」を比較した記事の中で、兵器でないメカが「螺子の囁き」では登場しやすいから、鉄道も出るかも、という期待を表明しておきましたが、いやあ本当に出るとは嬉しい限りです。
で、お題はロシア・ソ連熱愛者の速水螺旋人氏にふさわしく、ロシアの蒸気機関車でした。E型というのはずいぶん素っ気ない名前ですが、世界でもっともたくさん作られた蒸気機関車(およそ1万4千輌)として有名です。ロシアで速水氏は実見されたそうで、絵もいい感じです。比較的小振りな動輪が5軸並んで(先輪も従輪もない。軸配置は0-10-0)、その上にボイラーが載っかっている姿はスマートさは全くありませんが、機関車らしいパワフルさはありますし、どこか短足ぶりがユーモラスな感じもします。1912年初製造で2次大戦後まで作られていたとか(道理で数が多いわけです)。日本でいえばちょうど9600形と同世代ですね。小径の動輪をたくさん並べてその上にボイラーを乗せた貨物機、という点では似ているかもしれません。どちらも末永く活躍したし。
兵器などのメカを巧みに描かれる漫画家さんが、こと鉄道になるとバランスが変になったりすることがままあったりしますが、そんなことないのが今回の「螺子の囁き」の嬉しいところです。短足な感じが、速水氏の画風とも相性がよかったのかも。もっとも、蒸気機関車のスペックで一番大事な動輪径は書かれていませんが(1320ミリだそうです。1333ミリと書いていた本も見た覚えがあります。どちらにせよ、ロシアの5フィート=1524ミリゲージより小さい動輪な訳で、1250ミリの9600以上に短足な感じ)。
しかし、ハタと思ったのですが、ロシアの鉄道のことってどうも日本ではあまりわかりませんね。このE形は、世界最多生産ということで存在ぐらいは小生も知っていましたが、ロシアの機関車の技術的な特徴とか系譜、というのはさっぱりです。なるほど英米独と違い輸入機はありませんでしたが、満鉄が繋がっていたという浅からぬ縁はあるはずなんですけど・・・。
当ブログに折々コメントしてくださる鈴木光太郎さんのブログ「蒸気機関車拾遺」では、最近ロシア関係の機関車が数多く登場していますね。E形より古い19世紀の話題が多いようですが、E形の話題も出ています。写真もあるので、興味を持たれた方は是非ご参照ください。紹介されているのがスウェーデン生産バージョンというマニアさに脱帽(E形はロシアの他ドイツとスウェーデンでも生産された由)。
ロシアのこの0-10-0機の総生産台数は知りませんがかなりの数でしょうね。
ドイツ製に関しては1922年、
エスリンゲン社、11台、
製造番号4045~4055、機関車番号EG5589~EG5599、
ボルジッヒ社、57台
製造番号11071~11092、機関車番号EG5004~EG5010、
製造番号11116~11165、機関車番号EG5613~EG5662、
の輸出実績があります。この時期ボルシェビキに敵対行動を取らなかったのも受注の原因のひとつ? とか考えてます。
それはさておき、情報ありがとうございます。エスリンゲンとボルジッヒで造っていたんですね。時代からすれば、世界からつまはじきに近かった敗戦国ドイツと革命ロシア間のこういった交易は、かなり合理的なことだったのでしょう。