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筆不精者の雑彙

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今流行りのお米の話題に関連するような話

 色々忙しく、気候も宜しくなく、機械の調整にも手間取って、なかなか大変です。ブログの更新も思うに任せず、先月発売の『COMICリュウ』の感想も書かぬうちに今月号の発売日が来てしまいました(でも忙しくてまだ読んでません)。あんまり放っておくのも何なので、今日は珍しく? 時事的な話題に関連したようなことを一つ。

 昨今世間を騒がせております、本来工業用に使う汚染された事故米を食用に転売したという問題は、あちこちに波及して留まるところを知らぬ状況のようです。そして、問題の一つに、「工業用」に使うとされた事故米の用途を、農水省がろくろく把握していなかった、具体的には糊やベニヤ板の接着に使うと当初発表があったのに、各々の業界からほとんど使わないと反論された、結局「工業用」ってなんなのよ? ということがあります。

 「工業用糊に限り販売」 農水省の説明は大ウソだった(J-CASTニュース)

 では米で出来る食品以外の工業って一体何があるんだろう、と思っていた矢先、コンピュータ環境整備などで散乱した部屋の整理中、以前話題にした大河内正敏『味覚』(中公文庫版)が発掘され、その中に米の面白い工業利用の話があったので一つご紹介。書かれたのは敗戦直後の1946年のことです。
 ・・・日本は食糧には困らないと思っていたのが、今日になると米が一年に千二、三百石も足りないという騒ぎになった。ふり返ると、米が生産過剰で、農家は米価の下落に脅かされるから、米を消費する化学工業を研究してくれと農林省から鈴木梅太郎博士の研究室に依頼があったのは今から十年とは経っていない。というのは日本米の持つ味覚は、我々が賞味して、シナ人その他の人々には、ビルマ米やインド米、南京米、の方が向くのみならず、値段も安いから日本米は輸出が出来ないのである。輸出されている日本米は、ほとんど海外在留同胞の需要と、欧米人のわずかが、日本米の味覚を讃美するに過ぎないのである。ところがフランスは在留日本人の数と比べて、日本米の輸入が格段に多いから調べてみると、フランス人の味覚の発達からではなくて、有名なフランスの化粧品工業が白粉の原料にしていたのがわかった。日本米でないと顔に白粉の乗りが悪いそうである。
(同書pp.126-127 太字は引用者による)
 と、化粧品にしていたんだそうです。理研の総帥の発言なのでなにがしか根拠はあるのでしょう。
 では今度の汚染米も化粧品に・・・って、化粧品も今はそんなもの使わないのでしょうけど。だいたい今時「白粉」自体、歌舞伎役者や舞妓さんでもないと使わない気がします(女性陣のご指摘乞←このブログに女性読者がいるのかは微妙)。よしんば米を使ってたとしても、これも健康被害の懸念で採用されることはないでしょう。昔々、白粉に使っていた鉛白よりかはずっと安全だと思いますが。
 「昔ながらの製法」が安全を意味しない場合もあるのでございます。いや、実はこういうこと結構多い筈なんですけどね。
Commented by 無名 at 2008-09-23 10:37 x
本来、事故米は消毒用、工業用アルコールや接着剤、そして製紙用の粘着材で用いていました。
ただ、今日の日本では輸入材料のほうが安価なため(もしくは小麦原料)事故米の行き先は無かったでしょう。
ちなみに、本来、有ってはいけない話ですが、カビが生えた米をもう一度精米すると、加工米レベルの味に戻ることが大半です。
Commented by 坂東α at 2008-09-23 11:59 x
こういうのも飢餓輸出というのかしらん>化粧品
まあ,コーンスターチも使うからおかしな話ではないですが,肌に触れるのはたぶん別口の規制があるんではないですかね.
Commented by bokukoui at 2008-09-23 23:46
>無名さま
なるほど、消毒や工業用のアルコールなら問題なさそうですね。それを敢えて呑む某書記長のような輩は自己責任。しかし昔は家庭でも御飯粒の余りで糊など作ったようですが、今は工業用でも使わないんですね。

カビは・・・やっぱ削れば大丈夫ですか(笑)

>坂東α氏
そうですね、南京米を食用に輸入して化粧品用に輸出してるんですから。

ちなみに米の粉はそのまま単純に白粉として塗る、という風習が古来から中国などあったようですが、フランスの化粧品は米にどんな加工をしていたんでしょうか。
Commented by 無名 at 2008-09-24 12:49 x
九州や山陰の神事で米を微細に砕き、水を混ぜ練り上げ男同士が塗りたくる、「白粉祭り」が存在します。
水とともに、油脂やワックスを混ぜたのかもしれません。
Commented by 鮭缶 at 2008-09-24 17:41 x
元農水官僚の大学院の後輩が言ってたんですが、昔は色つけて出荷してたそうですよ。

量が桁違いになったんでしょうけど
Commented by bokukoui at 2008-09-25 22:55
>無名さま
米というのは、日本では様々な習俗と結びついておりますので(今回の騒ぎが健康上の問題以上に騒がれるのも、一つにはその名残かもしれません)、お祭りなどでもいろいろな形で登場するのでしょうね。油脂やワックスを使うかはわかりませんが・・・(日本の食文化は世界にもまれにみるほど油脂分が少ないとか)。

>鮭缶さま
なるほど、確かに安全のためには色をつけておけば合理的ですね。何でやめたのかは、追求してもいいかもしれません。
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by bokukoui | 2008-09-21 16:29 | 食物 | Comments(6)