鉄の道は一日にしてならずぢゃ
まあ、そんな話をしてもしょうがないので、溜まっていたメールをようやく返したりしたついでに見つけた著名法螺ニュースサイトのネタを一つ。
bogusnews
「鉄道の日」の14日、全日本レール鉄同好会(本部:品川)が都内大崎で総会を開いた。席上、10月14日が鉄道の日であることがここまで広く浸透していることには慶祝の意を表したいと思います。bogusnews主幹も「白金桟道橋」や「短尺レール」など、ネタの吟味にも力を入れており、その力の入れようを心強く思います。
「真の鉄道ファンと呼べるのは、われわれ“レール鉄”だけである」
との宣言が読み上げられ、満場一致で採択された。
レール鉄は、鉄道の線路を構成する軌条(きじょう)=いわゆるレールだけを好む鉄道ファンのこと。最近ではキモくないタレント鉄オタの登場で鉄道趣味が市民権を得つつあるが、レール鉄はかねてから「あんなものは鉄道趣味とは言えない」と主張してきた。
「鉄道とは文字通り“鉄の道”。つまりレールのこと。レールこそが鉄道の主役であり、列車や駅弁などおまけ。真の鉄道ファンならレール鉄の道を突き進むべき」
というのだ。(後略)
しかし。
これはそんなに嘘ニュースでもない、そうもまた同時に思ったわけで、小生が読んだ第一印象は、「『全日本レール鉄同好会』の会長は、やっぱ石本祐吉氏かなあ」というものでした。つまりこんな本もあるもので。
写真と図解で楽しむ
『増補版 鉄のほそ道』の姉妹編.
石本さん、また新刊出されるんですね。詳しい書誌データはリンク先にありますが、2310円なら買いでしょう。あ、小生、姉妹編の『増補版 鉄のほそ道』持ってます。面白いですよ。(万人には勧めませんが)
ボーガスニュースの「『エセ鉄道ファンにしてただの“列車好き”である“乗り鉄”などを撃滅し、レール鉄が鉄道界を前衛として支配していく』という“レール鉄原理主義”」という台詞に笑いつつも、結構「鉄道趣味とは鉄道に乗ることではない。乗っているのはただの顧客だ」などと、最近の「鉄道ブーム」に放言することもある小生としては、いくらか苦笑も混じらざるを得ませんでした。もちろん「乗り鉄」を否定する訳じゃないし、そこから裾野が広がっていくのは結構なことです(少なくとも、初心者向け=「萌え」に走ったミリオタより何千倍も)。
もっとも石本氏は、鉄道が出来て観光地がどう発展したかとか、鉄道官僚の人事だとか、こういった話題に「それが鉄道とどういう関係があるんですか?」と仰った、それくらいに筋金入りの方ですが・・・。石本氏ほど極端でなくても、古レールの研究なんてのは結構メジャーな趣味で、以前このブログでも紹介したこちらのサイトなどは、その代表的なものです(最近更新ないようですが・・・)。
しかしまた、世の中にはさらなる「鉄」マニアという方もおられまして、小生の存じ上げるさる軍艦マニアの方は、軍艦を造る鉄のことをひたすら究めておられました。
「鉄」の道も深いのであります。
確かに一般には知られることがちっとも想定できない世界ですが・・・「今日の早川さん」に、アグネちゃんが登場(アグネス・チャンじゃないぞ)したところで、分かる人はあんまりいなさそうですしね。
それはそれとして、上掲ボーガスニュースの記事中に「短尺レール」というのが出てきますが、これは普通のレールが現在一本25メートルの長さ(25メートルごとに継目がある)なのに対し、それより短いものを指します。溶接してロングレールになっているのが今の日本の幹線では普通ですが、戦前の日本では25メートルどころか幹線でも10メートルごとに継目のあるのが普通でした。そんな路線を3軸ボギー客車で走ったらさぞ喧しかったでしょう。
で、そんな昔ながらの10メートルの短尺レールなんて、今時はもうほとんど絶滅しているだろうと思いますが、それが写っている写真があったので以下に紹介。クリックすると拡大表示します。
拡大表示していただければ、赤で印をしたところに継目があることがお分かりいただけようかと思います。枕木の本数からして、これはおそらく10メートルレールだったでしょうね。既に廃線になってしまった線路ではありますが・・・。
レールの継目の音といえば、小生は阪和線の快速が強く印象に残っています。幼時帰省の際に阪和線の快速に乗った際、少しガタがきはじめた103系や113系が全速力で走る様は、なんともスピード感がありました。それはレールの継目を車輪が越えるジョイント音と、風切り音、窓枠がガタガタ揺れる音によって、大いに盛り上げられていたのでした。そして雄の山トンネルを抜け、紀ノ川の平野が一望されると、ああ和歌山に来たなあと思ったものでした。
しかしJR化後だったと思いますが、ロングレール化によりすっかり静かな走りになってしまい、スピード感は失われました。その後は帰省も自動車化して(阪和道が開通)、阪和線も長らく乗っていませんね。
このような感興を催す、しかし一般的には騒音と振動のもとであるレールの継目ですが、日本ではほとんどの場合相対式継目といって、左右のレールの継目を揃えて同じところでつなぎます。一方、相互式継目といって、左右のレールで継ぎ目をずらす方法があります。概して、欧州は相対式で、アメリカは相互式といわれております。
相対式は上の写真で分かりますから、相互式の具体例を。これはグランドキャニオンの駅で撮影したものです(前にもこの写真は掲載していますが、今回は一部を大きめで)。この写真はクリックすると拡大表示します。
ところで、日本は明治末からレールの国産化を行いますが、その際のレールの規格はアメリカの鉄道に準じたものにしていました。明治の当初こそイギリスの影響が濃かった日本の鉄道ですが、20世紀以降はアメリカの影響の方がむしろ強いのではないかと小生は考えています。レールの規格もその一例だと思うのですが、継目のやり方は昔のままで変わらなかったということでしょうか。
なんだか話が例によってとっちらかりましたが、純粋に近い「鉄」の道もあるということで。マニアの世界はbogusnews主幹の斜め上を行く濃さなのであります。