やっと『月刊COMICリュウ』12月号雑感
・ナヲコ「なずなのねいろ」
引き続き回想篇。前号で示唆された眞さんとなずなの関係について描かれています。そろそろ次当たりからは現在に戻るのかな? なずなが三味線を弾くには、最初のきっかけとなった父、再び弾くきっかけとなった叔父がいたわけですが、今度は年下の他人である伊賀君が関わった時にどんなことになるのでしょうか・・・しかし、マジで伊賀君の名前を忘れかけていて焦りました。
それはそれとして、幼少なずなのセーラー服姿がとても可愛いのですが、かわいいと単純に言ってしまうには胸の痛む美しさなのでありました。
多忙で色紙プレゼントに応募できなかったのが無念・・・
・速水螺旋人「螺子の囁き」
今回はロシアものではありませんでした。オリンパスのペンEEという、昔流行ったハーフサイズ(普通のカメラと較べ半分のフィルムですませるので、画質は粗いが節約になる)のカメラ。速水氏は今でも現用だとか。
鉄道の写真集を見ていたら、吉川文夫氏が「一頃安いのでハーフサイズを使ったが、今見ると箸にも棒にもかからない」とかこき下ろされていた印象がありましたが、固定焦点で簡単に扱え、セレン電池で消耗品もなく、今でも使える。なるほど、ロシアもの好き速水氏のお眼鏡に適いそうなメカではあります。
・黄島点心「くままごと」
今回は二本立て。一本目の「種を蒔くこぐま」は多分、大熊が登場しない初作品では。今回は二本とも「食品安全」関係なのか・・・いやまあ、そういう社会性とこの漫画の面白さは別に関係ないと思いますが。
・とり・みき/唐沢なをき「とりから往復書簡」
愛猫家の唐沢なをき氏が動物ネタを振ったのに対し、とり氏
「どいつもこいつも あいつもそいつも いしかわじゅんも
飼ってる犬猫のことになると えんえんえんえん デレデレデレデレ しやがって」
わりと共感。
・神楽坂淳/伊藤伸平「大正野球娘。」
前号は一体何をやらかしたのかと思いましたが、やはり途中で落っことしていた模様。本題から外れた大暴投だった前号の、後半が今回載っていましたが、通して読めば結構いい話・・・やっぱ大暴投だ。
・永井朋裕「うちゅんちゅ!」
なぜか知らねど2ちゃんリュウスレで評判の悪い本作、小生は大好きなんですが。
で、今号もトンデモ幼稚園シリーズ。肝心の宇宙人はあんまり登場しないし、ひところのホームコメディ的方向からも変わって、さてこの先はどうなるのか? 幼稚園児をこういう風に描くこと自体になにがしか抵抗感を覚える人がいる(2ちゃんのスレでは『園じぇる』を例に挙げていたのがいたけど、???)ようなことには、少し驚きました。本作はそういう視点ではないように思うのですが、どんなものでしょう。
・大野ツトム「ネム×ダン」
考えてみれば今までこの作品の感想を書いたことがなかったような。
たまきひさお「トランス・ヴィーナス」と好一対? な作品です。遠く宇宙の向こうからやってきた宇宙人(的存在)が地球人に取り付いて、毎回これまた宇宙の果てからやってくる怪しい連中をやっつける、という枠は両作品とも同じで、取り付くキャラクターと取り付かれるキャラクターの性別が逆になっている(たまたまでしょうが)ためますます一対感があります。本作は取り付くのが男で取り付かれるのが女の子(めがねっこ)。で、どっちも面白いのが嬉しいところです。
・アサミ・マート「木造迷宮」
ありきたりの材料(シチュエーション)を、ごく正統的な方法(ストーリー)で調理したものであったとしても、丁寧な仕事を積み重ねれば、それは芳醇な味わいをもたらすのであります。
恰もこのお話中で、ヤイさんが作る肉じゃがの如く。
・安永航一郎「青空にとおく酒浸り」
新参者にはネタが分からんところが多すぎるけど、もはやそんなことはどうでもいい作品ではあります。単行本は火星人刑事のようなことにはならないといいなあ・・・いや、もう既になっているのか。しかしそれを踏まえて「ぱんつじゃなければありがたくないもん」の台詞を考えると、斯界の先達としての余裕が感じられます。
・安彦良和「麗島夢譚」
久しぶりにお話の続きが。台湾で暴れ回るオランダ兵、なんてのを読まされた日には、またぞろ Europa Universalis 2 なぞがやりたくなってきますが、時間がありませぬ。
ところで、宮本武蔵は本作中どう見てもボケキャラのような・・・こういう描き方はあんまりない気がして、それもまたよし。
・いけ「ねこむすめ道草日記」
巻頭カラー。単行本発売おめでとうございます。しかし正直、カラーでのキャラクターの顔色が、妖(あやかし)の猫娘はともかくも、小学生男子諸君のそれがちょっと不景気な感じが・・・猫娘だけでなく、彼らの可愛らしさも本作の魅力と思うだけにちょっと残念。お話の方は前号編仕立てで、次号が楽しみです。
・梶尾慎治/鶴田謙二「さすらいエマノン」
巻末カラーでオールカラー。扉絵に出て来る都電の廃車体の魅力的なこと。戦前製ながら都電ほぼ全廃頃まで更新しつつ働いていた古豪1000形(1052とナンバーも描いてある)。塗装の褪色した表現もまた美しい(廃物が美しいというのも変な話ですが)。しかし都電末期の黄色+赤帯の褪色というよりも、緑っぽいので旧塗装だったように見えますね。これのポスターが欲しいので特典に・・・ならんな。
え? 都電はどうでもいいからエマノンはどうしたのかって? 今回はオールカラーで8ページしかなくて(うち2ページは見開きエマノン)話は全然進んでいないんだから、「これはっ!」という一齣をためつすがめつ鑑賞というのでいいんではないかと。
・京極夏彦/樋口彰彦「ルー=ガルー」
今号は休載でしたが、いなくなって初めて分かるありがたさ、と申しましょうか、やはりこれが本誌の看板なんだろうと改めて感じ、単行本を買い込みました・・・が、忙しくてまだ読んでいないという次第。
・横尾公敏「ロボット残党兵」
アクセス解析をしたらここからリンクが張られていたのですが、もちろんご紹介いただいたのは大変有難いことと思っておりますけれど、元の記事からそのような引用のされ方をされるとちょっと微妙な気もします。
・「ちみもりを短篇集 SF編」(別冊付録)
ゼオライマーのちみもりを氏の、デビュー作も含むらしい80年代の旧作を6本に、あさりよしとお氏との対談を収めるA5の小冊子。
内容は、嗚呼栄光の80年代って感じです。ロボットが女の子を襲ってどうしたこうしたとか。しかし、これら短編の初出は書いていないのですが、多分『レモンピープル』とか『プチアップルパイ』とかですよね・・・早い話がエロマンガ雑誌に載せていた作品を別冊に付けているわけで、うーん大した編集部。ナヲコ先生の旧作を集めた単行本出したんですから、ついでに『DIFFERENT VIEW』も復刊してください。
まだ読んで思ったことは幾らもあるのですが、あまり長くなりすぎると書くのも読むのも大変になりますのでこの辺で。
しかし今回の別冊付録には驚きました。面白く読ませては貰いましたが、『リュウ』編集部はやはりエロへのこだわりがあるのでしょうか。もうこうなったら、年に一回『裏・COMICリュウ』とでも題して、今の連載陣でエロマンガ雑誌を出したらどうかと思います。きっと読者層が大きく拡大・・・しないかね、やっぱ。そっち方面の実績のある方もさりながら、エロというお題を出されたらどう切り返してくるのか、是非読んでみたい作家さんも多い雑誌ではありますが。
※追記:その後『リュウ』が附録で『リュウH』なる別冊を出しました。