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2007年 03月 26日 ( 2 )

「エロマンガ・スタディーズVol.1」@ロフトプラスワン レポ後半

 前半の続きです。

 第二部は20分ほどして再開。第二部は各人お勧めのマンガなどのネタを持ち込んでトーク。

・第二部
しばた氏「漠然と最近(2000~)の話を。04~05は面白かった。06は引き抜きが多くて再編成中という感じ。」

●長編化について
しばた氏「エロマンガの長編化がかなりあった。多かったのが『メガストア』、一番売れている雑誌だった。そのため読み応えのある作品が多かった。例としては師走の翁『シャイニング娘。』、みた森たつや『小池田さんと遊ぼう!』(恋愛と「萌え」とエロとがすべてある)、東雲太郎『Swing Out Sisters』(しばた氏の2005年ベスト)」
永山氏「長編は諸刃の剣。固定客がつかめるけれど一見さんお断りになりかねない。リスクはどうか」
しばた氏「エロマンガの長編は一話完結型が発展したものが多い。読者もそれを求めている。ここに挙げたような作品は、話が続くことでラブラブ度が上がるとエロ度も比例して上がるのがよかった」
永山氏「長編はキャラクターの奥行きが出る」
しばた氏「印象的だったのはゼロの者『わすれな』」
永山氏「短編であっても余白を感じさせてくれる、上手い人だったので長編もうまくいった」
しばた氏「マイノリティ『お嬢様と僕』、キャラクターが立ったので長編になった。絵はビザールな衣裳などくどいが話はラブラブで『萌え』系。ラブラブ度を高めつつエロ度を高める」

永山氏「やっぱみんな恋愛したいのか」
しばた氏「甘ったるい恋愛ものが増えている」
永山氏「でもセックスはがっつんがっつんにやってるでしょ」
伊藤氏(?)「キャラクターは善人か」
しばた氏「出てくるキャラクターは善人が多い」
永山氏「恋愛するのは善人なのか」
伊藤氏「そうまとめると別の所へ行ってしまう(笑)」

しばた氏「昔は雑誌の中で、抜き担当・『萌え』担当・ファッション系・ギャグ担当・ストーリー担当など役割分担があった。それを一人の作家がやるようになった」
伊藤氏「つまり16ページで入らなくなった(から長編化した)」
しばた氏「こうなったのはエロゲーの影響では。エロゲーはマルチエンディングでいろんな要素を一本で満たそうとしている。価格が高いのでユーザーもそれを求める」
永山氏「価格が高いからというのは面白い。そういうのに慣れた人がエロマンガを読むと、物足りなく感じてしまうのでは。単行本一冊の中で全部満たしたい」
しばた氏「雑誌も、『メガストア』なんかは多方面に展開している」

●雑誌の表紙について
 ネタとして、永山・しばた両氏が奇しくも共にスキャンして持ち込んだのが、『LO』2007年3月号の表紙。

 これは既にネット上でも大いに話題になっていた由。
しばた氏「この表紙のラーメンも『全部のせ』みたいですね(笑)」

永山氏「このラーメンの表紙は、エロマンガに見えないがエロマンガでしかありえない表紙。どの雑誌でも表紙には情報を沢山盛り込もうとするが、『LO』は表紙のデザインを巧みにして、表紙買いを狙っているのでは。一昔前なら村田蓮爾の表紙のために雑誌を買う人がいただろう」
しばた氏「今は『TENMA』をうるし原智志のために買う人もいるみたいで。雑誌の表紙は捨てているが、うるし原の表紙が欲しいと言われたことがあった(笑)」

●巨乳(人外)vs貧乳(ロリ)
しばた氏「2006年は再編成中のため、ベストを選ぶのが難しかった。
最近のエロマンガは巨乳と貧乳しかない。でかいのはとことんでかく、小さいのはとことん小さくなっている。巨乳にはスタンダードな巨乳とそうでないのと(「巨乳に「スタンダード」とはなんぞやという声)、スタンダードなのは『人間に見える』もの。人間に見えないというのは、HG茶川のようなの。上乃龍也の乳はつやつや、テラテラ。天太郎作品も同様。CG技術の賜物か。草津てるにょも同様。
人間に見えない巨乳のHG茶川も、最近『萌え』に目覚めてきた。茶川作品の女の子は服を着てるとマトモだが・・・」
永山氏「まともか?」
しばた氏「・・・が、脱げば脱ぐほど乳がでかくなる」
伊藤氏「いいですね」
永山氏「いいか? 胸にでかいチンコがついてるみたいな」
伊藤氏「それは褒め言葉でしょう」

しばた氏「巨乳といえばRaTe『日本巨乳党』がすごい」
『日本巨乳党』の「巨乳平面(?)説」の説明。乳を近似した球に見立てた場合、貧乳の方が球の直径が大きいから実は巨乳なのだ、という驚くべき説。会場爆笑。
伊藤氏「これもギャグですか」
しばた氏「まあ、ギャグでしょう」
永山氏「いや、RaTeだからね」

しばた氏「次は貧乳を。貧乳といえばロリですね。
ゴージャス宝田は台詞が熱い。寡作なのが玉にキズ。寡作といえばデビュー13年目にして初単行本という大山田満月の本も発行が遅れている模様。
ロリでは関谷あさみがよい。スタイリッシュで綺麗な絵柄。
また、鬼束直はすっきりした画風。
いい人もいっぱい出ているが、時節的に厳しい世界」
永山氏「いつも厳しい分野だと思う。寡作ならいいけど、ロリ系の漫画家を見なくなると、何かあったんじゃないかと思ってしまう。・・・最近、月角先生見ませんね?」
しばた氏「大山田満月が13年単行本出なかったので、『ホットミルク』が捨てられなかった」
伊藤氏「もともとエロマンガって捨てにくい」
永山氏「俺はボンボン捨てちゃう」
伊藤氏「『ボンボン』捨てるのかと思った(笑)」

●A
しばた氏「貧乳の次はおしりの話。最近はおしり(での行為)を入れるのが標準になってしまった」
伊藤氏「おしりってそっちの方の話か」
しばた氏「最近のでは紺野あずれ『思春期クレイジーズ』。しかしなぜおしりが普通になったのか」
永山氏「バリエーションの一つとして」
しばた氏「同時に何本も挿入するのが増えた。快感をより強く表すために、1本より2本、2本より3本と増えていったのか。しかし『思春期クレイジーズ』はおしり一本にこだわった作品」

●永山氏のおすすめ
しばた氏「永山さんのおすすめを伺いたい」
永山氏「しばたさんとかなりかぶってる。最近『抜き』とは別に大笑いしたのはぐら乳頭『エスケープ』。ふたなりしかいない学校というのは上連雀三平と似ているが、ぐら乳頭は頭のネジが外れてる。ここへ転入してくるのが男の子で、ふたなりの教師が彼を襲って孕ませると叫ぶ。チンチンも乳もでかい。このバカさは芸風」

●三和出版からのおみやげと変格マンガについて
 この時点で21時を回り、永山氏「あと1時間弱なので出し惜しみしないで・・・」
永山氏「仕事で行った三和出版で、今回のイベントのプレゼント用の本を色々と貰ってきた。
まずは「キモーイ」(参考1参考2)で2ちゃんによく引用されて有名な、にったじゅん『奪!童貞』。にったじゅん作品は人気があって、ロングセラーになっている。登場する女の子が皆気が強く、ハードボイルドな意味で非情。これが人気があるのは一種の童貞ドリームではないか。どんな形でもできればいい、というマゾな発想。それがおおっぴらになってきている。いいこと
にったじゅんの新作は『県立性指導センター』、はじめてにったじゅん作品の表題から『童貞』が消えた。にったじゅん=童貞、というイメージが定着したから。

三和で変態といえば栗田勇午『ノードッグ・ノーライフ』、獣との愛、いや獣は分からないけど、女の子が獣を愛する姿を描く。絵が浦沢直樹に似てる」
伊藤氏「似てるか?」
永山氏「『YAWARA!』の頃の絵に。栗田勇午という名前もスピリッツ臭が」
伊藤氏「あー。『YAWARA!』というよりキートンの娘だな」
永山氏「獣姦ものは犬と女性とどっちに読者は自分を投影しているのか」
しばた氏「やっぱ女性じゃないですか」
伊藤氏「獣に表情をつけるのが難しい」
しばた氏「トドとかオットセイとかもいいと思うんですけどね。ジュゴンとかも」
伊藤氏「ジュゴンって語感がエロいよね」
 他にプレゼントとして、古いアンソロ(詳細失念。みなすきぽぷり(現椎木冊也)が描いていて、編集伊藤剛氏)やBL作品も。
永山氏「三和出版はこういった変なものに強い。消えて欲しくない」

しばた氏「三和の話になったので、変格な人の話を。『萌え』と抜きの二元化で、町野変丸駕籠真太郎のような作家の活躍の場が少ない。しかし最近は、変なことをするにも可愛い絵でなければならない。その代表例が掘骨砕三」
永山氏「この『ひみつの犬神コココちゃん』のクライマックス、団子虫に変身した先生が30台にして初めてセックスの喜びを知るシーンなど、一般化しうる感動をちゃんと含んでいる。マンガ読みで堀骨砕三を読まないのはモグリ」
しばた氏「最近のではまた、奴隷ジャッキーの作品が凄い。変なことのできる雑誌が減ったといったが、意外と変なのが多いのが『エンジェルクラブ』。奴隷ジャッキー、HG茶川、中華なると山本よし文など。中華なるとの作品は男キャラのおやじ顔が好き
伊藤氏「これって売れてんの?」
しばた氏「さあ・・・」
しばた氏「変格エロマンガで注目なのがうさくん。『しあわせぱんつ』の初回限定版には附録で女児のパンツがついてきた。今ここに持ってきたので・・・」
 しばた氏、「ぱんつBOX」をオープンし、パンツを掲げて会場に示す。アイロンプリントの一式も同梱されている。
しばた氏「名残惜しいのですが、これを来場者の方にプレゼントと。私は初回限定版と通常版と両方持っていて、本はほとんど変らないので、もちろんパンツだけでなく本もおつけします」
 しばた氏、荷物を探してややあって、「すみません、本忘れました。プレゼントはパンツだけで」(会場笑)
しばた氏「この人のマンガは私は大好きです。今時カラーもフルアナログで作画していて、この職人技的な線が・・・」

●伊藤剛氏、手塚のエロを語る
 二つの流れを事前に考えてきていて、一つは自分はここではショタ担当かと思ったが、肝心の一押しの本を忘れてきてしまったこともあり、今までの濃い話に対抗して濃い方を。
 4月から、手塚治虫の前週に入っている作品をオンデマンドでまとめて自分だけのアンソロジーを作れるという、『手塚治虫Oマガジン』というサービスが始まる。
 手塚がエロいということは有名であるが、『ダ・ヴィンチ』誌の企画で自分もこれを作ることになって、そのために手塚を読み直すと、今まで出てきたような話を手塚は70~80年代にやっている。エロに関しては「テヅカ・イズ・アライヴ」

 ちゃんと読み直さないとはっきりとは言えないが、手塚は60年代から急速にエロくなって行き、ヤバいエロさは60年代末~70年代が山だったのではないか。例えば「グロテスクへの招待」では、少女が自分の好きなものに何でも同化して蜘蛛女や蜥蜴女になってしまう話で、「シャミ-1000」という作品ではネコ型宇宙人が登場し、ツンデレ的要素もある。
 「低俗天使」という作品はヴェトナム戦争を背景としているが、ロリっ子が出てきて、「自分も働く」といってヌードショーに出演しそうになる話がある。それを主人公が止めさせた時のヌードショー屋の言い分「その子が自分で20歳だと言ったんだ」は、昨今のエロゲーの、どうしてもそうは見えないけれど「登場人物は皆18歳以上です」を髣髴とさせる(笑)。
 この作品には「おにいちゃん」の台詞もあり、また女の子が服を着ているのか着ていないのかよく分からない描写が面白い。簡潔な線でキャラクターの存在を出す手塚らしさだが、のちに手塚は劇画の影響でそれを失っていく。
 
 この企画ではページ数の都合上入れられなかった作品に、「こじき姫ルンペネラ」という今では許されなさそうなタイトルの作品がある(『ヤングマガジン』連載、1980)。押しかけ女房的コメディで、これは当時登場したばかりであった(『うる星やつら』は1978~)。それを取り入れた手塚。
 本作は最後の方になると色々な映画のパロディを入れまくって、グダグダのメタフィクションになり、「こんなマンガ読んでると馬鹿になるぞ」と登場人物が読者に言って終わりになる。

 社会問題や環境問題のようなテーマがあった70年代までの方が、手塚は脇からエロを差し込んでいた。エロを扱いやすくなったはずの80年代になってからの方が、正面から扱うのには照れがあったのか、手塚のエロはむしろ退潮した。

●告知
 ここまでで時刻は22時50分頃となり、締めとして告知が2点。
 まず「同人誌生活文化総合研究所」の三崎尚人氏が登場、5月19日に豊島公会堂で同人誌と表現を考えるシンポジウムを行う由。警察庁の「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」(これについては当ブログでも過去に触れました)の報告書に同人誌や即売会も挙げられており、児ポ法の改定も今年。さらに警察のこの問題の立役者だった竹花豊氏(「ロフトでイベントやるといつも山本夜羽音に悪口言われてる人)も警察を辞めて参院選出馬という。この状況にどう対応するか、というもの。
 もう一点はロフトプラスワンで7月11日に行われる「メガネ茶屋」。「めがねっこ萌え」向けだったメガネっ娘居酒屋の向こうを張って、「メガネ男子萌え」の腐女子向けイベントとの由。メガネの男性は桟敷に上げられて「見られる」側になるのだとか。
しばた氏「7月11日は私の誕生日です」

 最後にプレゼントのじゃんけん大会をやって、23時10分頃イベント終了となりました。

 大変面白いイベントで、知ってる名前も知らない名前もいっぱい出てきて楽しかったですね。分かればそれに越したことはありませんが、濃さがある閾値を越えると、分からなくてもそれはそれで面白くなってきます。それだけの味のあるイベントでした。「エロマンガ・スタディーズVol.1」ということは、Vol.2もあるのでしょうか?
 このイベントでの議論に関連して小生が思うところもありますが、それは次の機会にして、今日の記事(前後編になってしまいましたが)はなるべく会場のトーク内容を伝えることに狙いを置きました。よくまとまって評論もついた記事は他サイトさんでどうぞ(←最初に書いておけよ)。小生はなにさまエロマンガに関して素養が薄いため、下手に要約するとツボを外してしまいそうだったので、このような形式とした次第です。それでも漏れは多いと思いますが。

 ひとつだけ個人的な発見を書いておきますと、ひょんなことからこの会場に来ていた人に、複数名の東大生がいたということが判明しました。聞けば美術史やSF研やTMRなど、なるほどその筋の方々ではありましたが、どうも東京で妖しいオタクの来そうなイベントをすれば、先日のホワイトデー粉砕デモといい、必ず何人かは東大関係者が来るようで。やはりオタクの多い大学なんでしょうね。

 余談。
 イベントで出てきたマンガ家の作品の大部分は小生は読んだことがありませんでしたが、その中で一番沢山読んでいたのは駕籠真太郎先生でした。次点は多分もりしげ。

※エキサイト当局により当初の画像満載版が公開停止処分となったので、画像を削除した版となっております。その点ご諒承下さい。(2007.3.39.02:08再投稿)
※この記事の訂正に関する経緯を、3月28日付記事の末節に記してあります。

by bokukoui | 2007-03-26 23:59 | 漫画 | Comments(0)

「エロマンガ・スタディーズVol.1」@ロフトプラスワン レポ前半

 昨日見に行ったものの一つが、表題にあるとおり

 永山薫プロデュース「エロマンガ・スタディーズVol.1」

 でした。今日はそのイベントのレポートを。もう一つ見に行ったものについてはまた後日。
 このイベントはどんなものか、「プロデュース」した『エロマンガ・スタディーズ』の著者・永山薫氏のブログから引用すると、
『エロマンガ・スタディーズ』出版記念イベントでは時間的に詰めきれなかった「エロ漫画の現在」を新ネタてんこ盛りでガチに語り倒す濃厚3時間。今、エロ漫画はどうなっておるのか? ナニが面白いのか? どこがスゴイのか? 何から読み始めればいいのか?
出演:しばたたかひろ(OHP)
   伊藤剛(『テヅカ・イズ・デッド』著者)
   永山薫、ほか
 というわけで、1月31日に行われたイベント(このイベントのレポートについては、こちらのブログがリンクを集めてます)に続いて、エロマンガの現状を中心に語るというイベントでした(ということだと思います)。前回のイベントには所用で行けなかったのですが、今回は幸い行くことができました。
 ちなみにこれが小生にとって初のロフトプラスワン経験でした。

 初めてでしたが、新宿コマ劇場という巨大なランドマークがあるので、ロフトプラスワンはすぐ見つかりました。歌舞伎町の一角にあるわけですが、ちょっと周囲をうろうろしてみたら、「コスプレ(メイド)」喫茶が2軒見つかりました。アニメ絵の看板のキャバクラも結構あるし。
 18時45分ごろ会場入りしましたが、既に30人くらい先客がおり、最終的には80人くらいはいたのではないかと思います。立見はほとんどいませんでしたが、座席はほぼ埋まっているという状況。男女比は9割方男か。

 予定の開始時刻よりやや早く、19時15分頃から始まりました。
 以下にその内容を、会場で取ったメモから書き連ねて行きたいと思いますが、勿論全て筆記できたわけではありませんし、各論者の発言はメモから書き起こしたもので発言そのものではありません。「何から読み始めればいいのか?」の手がかりになるように、なるべく作品名や著者名は拾っておこうと思ったのですが、何分小生自身がエロマンガに関して大した素養があるわけでもなく、漏れや誤りは一杯あると思います。その旨ご諒承下さい。あと一部敬称略。
 マンガ家の名前は、原則として初出時は太字で示してあります。単行本の表紙画像を多く取り込んでいますが、これは個人的メモと同時に、当日スクリーンに画像が映し出されていた会場の雰囲気を少しでも再現したいという意図からです。多分。
※これが原因なのか、公開停止になってしまいましたので、画像を削除して再度アップしております。
※2007.4.30.追記:画像を元通り(正確には一点追加)に加えた完全版を、MaIDERiA出版局サイトに再度掲載しました。画像と書籍情報へのリンクつき完全版はこちら

・第一部
 壇上に永山氏・しばた氏・伊藤氏登場。

永山氏「今日のイベントは前回のイベントで喋れなかったしばた氏がメイン。もっとも事前にネタを仕込んだ後しばた氏に聞いたら、しばた氏とネタがほとんどかぶっていた」
伊藤氏「『漫鬼』ことしばた氏を立てたい」
というわけで第一部は基本的にしばた氏による解説が中心。

●まず、前回のイベントで触れられなかった最近の歴史(ここ四半世紀)について

 しばた氏がエクセルにて作成した表がスクリーンに。伊藤氏「パワポじゃないんだ」しばた氏「パワポ使えないんです」
1982年 『漫画ブリッコ』創刊
1986年 『ペンギンクラブ』創刊
1990年代初頭 有害コミック問題
1995年ごろ エロ漫画バブル到来
1999年ごろ 無修正化の波
2002年 松文館事件
2004年7月 コンビニ売りエロ雑誌に封印シール
 無修正化の波とは、『夢雅』など桜桃書房系が引っ張った。その関係者はのち現在のティーアイネットに。これによって作風も変る。クライマックスシーンだけ抜き出したようなもの、過激な表現をするため線を増やした結果、劇画っぽいものが出てきた。

●以上の歴史を踏まえて、しばた氏による昨年の総括

 1.業界再編で勝ち組と負け組が明確に。
 2.一般誌による作家引き抜きが激増。
 3.その穴を埋める新人作家の登場。


●1.について
 とらのあなのエロ漫画売上ベスト50を見ると、コアマガジンが圧倒的(40%)。とらではコアに初回特典をつけたりしてることを考えても多い。2位は茜新社、ワニマガジンも比較的よい。2ちゃんでの評価はまた別で、ティーアイネットも多い(ただし母数が少ないデータ)。
 永山氏、2ちゃんのデータを見て「お、上連雀先生がベスト10にいる」(会場笑)。また「コアマガジンは元気があり、ワニも雑誌を増やしていてやはり元気がある」と指摘。

 一方、老舗が苦戦しており、司書房の『ドルフィン』が休刊。しばた氏「『ドルフィン』好きだった。寂しい」
 また三和出版で、一旦雑誌からアンソロジー形態になったものの奇蹟の復活を果たした『フラミンゴR』が結局休刊。東京三世社も。日本出版社『レモンクラブ』も。
永山氏「塩山(芳明)さんが仕事減って大変。でもちくまの文庫本(注:『出版業界最底辺日記エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』)は『エロスタ』の2倍は売れてる」
 他にはメディアックス『コミックポット』や、「新進気鋭」の幻冬舎コミックスの隔月誌(誌名失念)も14号出して休刊。

 リニューアルする雑誌も。昨年の大ニュースとしては『ペンギンクラブ』のリニューアル、一つの時代が終わった。『ペンギンクラブ』的なものは『コミックシグマ』(茜新社)へ。
 また『コミックジャンボ』もリニューアルし、編集長が変って(元『ドルフィン』)、巻頭カラーの新連載がベテランのわたなべわたる
しばた氏「俺たちのふるさとはここにしかない、という感じです」永山氏「タイムマシンだな」伊藤氏「一巡してこれもあり、か?」
 伊藤氏に拠れば『コミックジャンボ』の読者平均年齢は41歳(一昨年の時点で)の由。年齢構成が偏っているがこれはエロ以外の漫画雑誌、さらには雑誌全体の問題とのこと。
しばた氏「『ジャンボ』はなつかしい、もう抜く云々の問題ではない、昔の友達に会ったみたいな」
伊藤氏「発言が枯れてるやん」

●2.について
 引き抜きの最たるものが秋田書店。『ヤングチャンピオン烈』はコンビニ売りエロ雑誌のノリがあり、執筆陣に非エロ出身の人がほとんどいない。もりしげCuvieなど(スクリーンに同誌の目次ページが示されるが、作家が多すぎて書ききれず)。伊藤氏「2000年ごろの『零式』みたい」
 『メガストア』で描いていたけものの★は、単行本が一冊もないのに引き抜かれた(「女の子の表情のバリエーションが多くて良い」とのこと)。堀骨砕三も描いた。
伊藤氏「秋田か外注に相当(エロマンガを)好きな人がいるのではないか」

 メジャー系でエロ出身の作家を使うのは、オタク系・萌え系が中心。かつては『ヤングアニマル』くらいが限界だったが、例えば講談社の『少年シリウス』にはひぢりれいが別ペンネームが描いている。メディアファクトリー『コミックアライブ』に國津武士
永山氏「漫画の力がしっかりしている人たちなので、見る目ある編集なら何にでも使えると分かる。萌えだけの人とそこが違う」

 以下、この論点を巡って論者3人が議論。
永山氏「これまでの引き抜きは、エロマンガ界で名を売って頂点に立った人が、言葉は悪いが『上がり』でなることが多かった」
しばた氏「昔の引き抜きの場合、引き抜かれた青年誌での役割はエロ担当だった。最近はエロなしでもOKになっている。メジャーの引き抜きの代表が東雲太郎。エロ系を生かして、しかも恋愛ものとしても面白い」
永山氏「東雲太郎は乳もでかいし男の子も可愛い。もう『ふたりエッチ』の時代じゃない
口が滑った永山氏にしばた氏・伊藤氏が反論。永山氏「聞かなかったことに」

伊藤氏「直接的な性愛描写のあることの意味が薄れているのではないか」
しばた氏「『萌え』がプラスされたので、エロへのこだわりが薄れたのではないか。どっちかがあればいい。『萌え』ブームが、エロ作家を一般誌が取り込むことを可能にしたのでは」
伊藤氏「『萌え』的なものを自分の読書体験で持っている人が、編集側でも地位を得てきたのではないか」
永山氏「潜在的に大きかった『萌え』の受容が公なものになった」
しばた氏「メジャー誌が『萌え』を取り込もうとした時、自分たちで作家を育てられずにエロから引っこ抜いた。エロ系はもっと自慢していいのでは、メジャーで育てられなかったものを生んだと」
伊藤氏「実は外注で同じ人が作ってる、とか」

伊藤氏「消費者の消費行動が、エロについて重きを置かないと、エロ誌の立場は苦しい」
しばた氏「抜きや『萌え』に特化して、幅が狭くなってしまう傾向はある」
伊藤氏「女子中高生向けでハッピーエンドになるような、ティーンズラブものの読者に男がいる。無修正化で進んだ強烈なエロについていけない人もいるのではないか。郊外の書店(レンタルビデオを併設しているような)の売れ方は、都市の専門店と全く違う。こういう需要もある。『萌え』が好きな人(キャラクターが好きな人)とエロが好きな人(こういった人は実写でも良い)とがいて、エロに走った後に揺り戻しが来たのでは。キャラが好きな人はついていけない」
永山氏「そこらへんにコアマガジンの強さがあるのでは。どちらの読者も引っ張れる。『萌え』と抜きに二極化して、『萌え』が一般誌に逃げた。さらにその揺り戻しで、コアマガジンや茜新社が売れるのでは」
しばた氏「最近注目しているのがEDの作品。かわいい絵を描くが性描写はえぐい」
伊藤氏「消しは?」
しばた氏「見りゃ分かるでしょ、ないですよ」
伊藤氏「バカには見えない消しですか」
永山氏「こういうのは鬼ノ仁なんかもそうでは」
しばた氏「鬼ノ仁も一般誌に引き抜かれた。エロが濃くなったので、これで一般誌に濃すぎて出られないのではと危惧したが、うまく一般誌に溶け込んでいる。編集者もうまくコントロールしてる」
永山氏「それは基礎がしっかりしているから。引き抜きのポイントは、『萌え』やフェティシズム以外に、『きちんとマンガが描ける』ということ。この点で、まだこの業界(エロマンガ)は宝庫」

●3.について
 再びしばた氏の解説。2006年は新人の台頭が目立ち、先ほど上げたチャートの上位にも初単行本の作家が目立つ。1位の小梅けいと『花粉少女注意報!』や、2位の『初犬』など。

 ここで話が逸れてペンネームについて。
しばた氏「最近のエロ漫画家は検索しにくい名前の人が多い。EDだのDE(?)だのDP(?)だの、あと犬も」
伊藤氏「元素記号みたい。アマゾンやセブンアンドワイのネット検索で不利では」
しばた氏「わざとやってるんですかね。親に知られたくないとか」
 他に検索しにくい作家・作品としてナイロン『ナイロン100%』が挙げられる。
伊藤氏「これは80年代初頭の渋谷のクラブ(戸川純などが活躍)の名前が元ネタ、余計分かりにくい」

 話はカラーについてに移る。
 カラーの上手い人が増えた。エロゲーや、ネット上の発表が増えたことの影響や、パソコンの機材としての進化によるものか。2ちゃんのスレッドで「絵を上手く見せるテクニック」というスレがあった。
伊藤氏「ネットのお絵かき掲示板などがあるため、絵描き当人も自分の絵がどこでどう影響を受けたのか分からない、というのが学校の生徒でいた」
 塗りの上手い新人としてあげられるのが石恵鳴子ハナハル。鳴子の単行本が出ないのは理解しがたいことだが、「かみちゅ!」のマンガを描いたせいか。ただ、塗りの上手い人の作品とは、もともと巻頭カラー4ページなどというのが多く、単行本化しにくい。

 前半一番の山場となったRIKIネタに。
しばた氏「RIKIもすごい。厳密には新人といえるか微妙だが」
永山氏「みさくら語もメじゃない」
 スクリーンに映った画像が見難いため、伊藤氏の要望により永山氏がRIKI作品の台詞を熱く朗読、会場大いに沸く。
しばた氏「RIKI先生天才ですね」
永山氏「脳味噌弾けてるね」
伊藤氏「これ、いいね」
 三人とも絶賛。
 RIKIは最近4コママンガも描いているが、内容が無茶苦茶なだけでなく、4コマ中3コマをぶち抜きで一コマにしてしまったり、凄い作品と紹介。

 しばた氏がその他に挙げた作者としては、てりてりお(「みずみずしい絵を描く、きっとメジャー系に引っこ抜かれる」)、ヤスイリオスケ(「巨乳がいい」)、大和川(「ぴちぴちした絵でプロポーションが良いい。最近のエロマンガは巨乳と貧乳しかないが、大和川は大も小も中も描ける」)。

 ここで伊藤氏が、自分の門下からめでたくエロマンガデビューした人を紹介。きりりんといい、『少女天国』に描いている由。その近作「ベロニカちゃんとぼく」は、ベロニカお嬢様と、お嬢様に仕える少年の話・・・と編集者も伊藤氏も思っていたところ、よく見ると「ぼく」に「乳がある!」ということに最終段階で気付き、編集者が男に直させようとホワイトを握りしめてきりりんに迫るも、作者は女の子の方が良いのだといって譲らなかったとか。
伊藤氏「描き手の中でも、エロと一般と両方描きたいという揺らぎがある」
しばた氏「でも両者の間に線を引いていますよね」

 ここで時刻は21時となり、第一部はここまでとして一旦休憩。
 後半に続く。

by bokukoui | 2007-03-26 23:58 | 漫画 | Comments(0)