先月に突発した(しかし実は数年前から少しづつ進んでいた)日本学術会議の新会員任命拒否問題ですが、これに抗議して問題発覚後にこのような署名活動が立ち上げられました。
この署名はすでに終了していますが、10日たらずで14万以上の署名を集め、それは13日に内閣府へ提出されました。その模様はマスメディアでも報道されています。
この署名活動を呼びかけられたのが、日本大学の古川隆久先生と、東京大学の鈴木淳先生です。お二人は、任命拒否された加藤陽子先生の大学・大学院での2年下の後輩で、鈴木先生は加藤先生の現在の東大での同僚でもあります。
そしてこの署名活動の結果と意味、学術会議任命拒否問題の見方について、さる10月26日に日本記者クラブで記者会見が行われました。会見に臨まれたのは呼びかけ人のお二人と、リモート参加の瀬畑源先生(龍谷大学)です。この会見は30分程度の三方の談話というか解説と、その後の質疑応答(30分の予定が20分近く伸びる)からなっていて、ネット上に動画が公開されています。
この動画の内容はたいへん学びになるもので、この任命拒否問題の核心がどこにあり、どのような問題に広がる懸念があるか、歴史的経緯や政治と科学の関係、公文書の扱いから見る前政権と現政権の問題、その問題が及ぶ影響、人文社会学の意義など、この問題に関する諸論点を網羅して、無体な攻撃を論駁するものとなっています。
先にまとめた石川健治先生の憲法論(「学問の自由」とこの問題の関係)と合わせ読めば、ほとんどの論点が論じつくされていると思います。
それだけの内容のある動画だけに、現時点で1万4千以上の再生回数があり、かなりの数だと思います。とはいえ署名した数の十分の一で、まだまだ広く知られていない憾みがあるのではと思います。この一因は、やはり1時間を超える動画で、気軽に見にくいことにあるのかもしれません。それに、この豊富な内容を後から参照するのに、動画ではやや不便です。そこで、勝手ながら私がこの会見を書き起こし、以下にまとめておきました。すると約2.3万字(!)の長さになってしまいましたが、決して間延びのない緊密な内容であることは保証します。
それでは、以下に書き起こしを掲載します。長さの関係から、本記事では前半の古川・鈴木・瀬畑各先生の談話の部分までを載せます。なお少しでも手短で読みやすくするため、敬体だった談話を常態に直し、敬語や間投詞を省略、一部の語順を入れ替えたり言葉を補足、参考のリンクを加筆するなど、書き起こしはそのままの文字起こしではないことをご諒承ください。もちろん、内容の趣旨が変わるようなことはないように気を付けております。石川講義書き起こし同様、現首相の名前は前々々首相との混同を避けるため、カタカナで表記しています。
(続きを読む)