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筆不精者の雑彙

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菅首相に日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める署名の記者会見書き起こし(質疑篇)


 本記事は、前記事「菅首相に日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める署名の記者会見書き起こし(談話篇)」の続きです。会見の経緯や元の動画については、前記事をご参照ください。


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# by bokukoui | 2020-11-02 14:19 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(4)

菅首相に日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める署名の記者会見書き起こし(談話篇)

 先月に突発した(しかし実は数年前から少しづつ進んでいた)日本学術会議の新会員任命拒否問題ですが、これに抗議して問題発覚後にこのような署名活動が立ち上げられました。

 この署名はすでに終了していますが、10日たらずで14万以上の署名を集め、それは13日に内閣府へ提出されました。その模様はマスメディアでも報道されています。
 この署名活動を呼びかけられたのが、日本大学の古川隆久先生と、東京大学の鈴木淳先生です。お二人は、任命拒否された加藤陽子先生の大学・大学院での2年下の後輩で、鈴木先生は加藤先生の現在の東大での同僚でもあります。
 そしてこの署名活動の結果と意味、学術会議任命拒否問題の見方について、さる10月26日に日本記者クラブで記者会見が行われました。会見に臨まれたのは呼びかけ人のお二人と、リモート参加の瀬畑源先生(龍谷大学)です。この会見は30分程度の三方の談話というか解説と、その後の質疑応答(30分の予定が20分近く伸びる)からなっていて、ネット上に動画が公開されています。


 この動画の内容はたいへん学びになるもので、この任命拒否問題の核心がどこにあり、どのような問題に広がる懸念があるか、歴史的経緯や政治と科学の関係、公文書の扱いから見る前政権と現政権の問題、その問題が及ぶ影響、人文社会学の意義など、この問題に関する諸論点を網羅して、無体な攻撃を論駁するものとなっています。先にまとめた石川健治先生の憲法論(「学問の自由」とこの問題の関係)と合わせ読めば、ほとんどの論点が論じつくされていると思います。
 それだけの内容のある動画だけに、現時点で1万4千以上の再生回数があり、かなりの数だと思います。とはいえ署名した数の十分の一で、まだまだ広く知られていない憾みがあるのではと思います。この一因は、やはり1時間を超える動画で、気軽に見にくいことにあるのかもしれません。それに、この豊富な内容を後から参照するのに、動画ではやや不便です。そこで、勝手ながら私がこの会見を書き起こし、以下にまとめておきました。すると約2.3万字(!)の長さになってしまいましたが、決して間延びのない緊密な内容であることは保証します。

 それでは、以下に書き起こしを掲載します。長さの関係から、本記事では前半の古川・鈴木・瀬畑各先生の談話の部分までを載せます。なお少しでも手短で読みやすくするため、敬体だった談話を常態に直し、敬語や間投詞を省略、一部の語順を入れ替えたり言葉を補足、参考のリンクを加筆するなど、書き起こしはそのままの文字起こしではないことをご諒承ください。もちろん、内容の趣旨が変わるようなことはないように気を付けております。石川講義書き起こし同様、現首相の名前は前々々首相との混同を避けるため、カタカナで表記しています。


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# by bokukoui | 2020-11-02 13:14 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(7)

石川健治「学問の自由とは何か」書き起こし(日本学術会議の新規会員任命拒否問題についての資料)


 周知のように、今月1日に火がついた、日本学術会議への新規会員任命に際し、うち6名の研究者を政府が任命せず、しかもその明確な理由を今に至るまで頑として明らかにしていないという重大な問題が、未解決のまま炎上し続けています。しかしいくら炎上しても、政府は木で鼻を括った答弁ばかりで真面目に答えません。世論も、もちろんこれはおかしいという人も多いのですが、同じくらい多くの人(しかも研究者を含む)が、「いつまで騒いでるんだ」「反日の中国の手先の連中を排除しただけ」「学者どもが利権を守ろうと騒いでやがる」「学術会議に入らなくたって研究できるだろう」「そもそも日本学術会議自体が無駄」などと、政府が自己の行為の根拠を明確にしないという基本の点から論点をずらし、とにかくお上に楯突くなんて怪しからん、と無体な「叩き」に走る事大主義を露わにしており、政府の姿勢に加えて今の社会そのものへの深刻な懸念を抱かざるを得ない状況と、私には感じられてなりません。
 本来は、もっと早くにこのブログで本件への抗議と、政府や「叩く」連中の無体さの批判をすべきと思っていたのですが、日々この件の進展が明後日の方向に、予想を悪い方向に上回って広がっていくので、ただ唖然としているばかりでした。そしてちっとも考えがまとまらず、しかし私のストレスは確実に高まって、今月は何と四半世紀ぶりにアトピー性皮膚炎と診断される事態にまで至っています。

 私がここまで本件を深刻に受け止めたのには、多分に個人的事情もありまして、今回政府が任命拒否した研究者の一人・加藤(野島)陽子先生は、私がゼミでお世話になり、博士論文の副査もしていただいた縁があったからです。さらに言えば、私が日本史の道に進むきっかけや、配偶者を得た出会いのおこりなども、先生と深く関係があり、公私ともに夫婦で恩師なのです。
 ですので私は、加藤先生の学問や人柄について、世の人よりも良く知っているのですが、その人にネットで(時にはメディア上でも)投げつけられた、あまりに無理無体で無礼で無恥な数々の発言には、怒髪天を突く思いでした。お前ら、そんな阿呆なことを言ってるどの口で、学術会議や学問のあり方に口を差し挟めると思ってるのか!?

 しかし怒ってばかりでも事態は良くなるわけではありません(怒りによる抗議の心なくしては事態がマシにならないのも確かですが)。そこで、この件――何が問題なのかは比較的分かりやすいはずなのに、政府やそれにお追従を述べる連中によって論点がずらされまくっている状況に対し、原点をしっかり踏まえて整理することで、立ち向かう姿勢を打ち立てるべきと思います。そこで友人に教えてもらったのが、冒頭の動画でした。
 これは、東大法学部の石川健治先生が、憲法の定めた「学問の自由」の意味を解説し、今回の件の何がどう問題なのかを詳細に、しかし明確に解説した、たいへんためになる講義です。また折々にジャーナリストの望月衣塑子さんが、状況の開設などを加えてくれています。しかしかなり時間も長いので、再生回数は4万回あまりにとどまっています(内容を考えればこれはむしろ、多いというべきかもしれませんが……)。
 そこで、より手短に情報を得られ、また参照がしやすいように、この講義を文字に起こしてまとめてみました(私自身の勉強の目的も込めて)。1時間半の動画を全部通して見る余裕のない方でも、本記事でしたら手短に、10分程度で目を通していただけると思います(それでも1万字以上ありますが)。どうか本件への正確な理解のため、そしてメディアやネットで繰り広げられている「叩き」が、いかに根拠のない誤ったものであるかを知るため、ぜひご一読ください。
 


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# by bokukoui | 2020-10-30 11:50 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(0)

イタリアの国会議員定数削減国民投票に関して多少思ったこと

 先日のこちらのニュースに関連して思ったことを備忘としてまとめておきます。
 ニュースとは、イタリアで国会議員の定数を大幅に削減する国民投票が行われ、賛成多数で可決されたというものです。主要な箇所を抜粋してみましょう。
 イタリアで国会議員の定数削減の是非を問う国民投票が20~21日に行われ、開票の結果、賛成票が約7割となった。上下院あわせて945議席が、600議席に削減される。
 イタリア内務省によると賛成は70・0%、反対が30・0%。投票率は51・1%だった。今後、下院は630議席から400議席に、上院は315議席から200議席に削減される。
 議員定数の削減は、18年の総選挙で既得権益の打破を訴えて躍進し、同年に発足したコンテ政権で連立与党の一角となった市民政党「五つ星運動」が求めていた。主要紙レプブリカによると、今回の定数削減で、上下院合わせて年間約8200万ユーロ(約101億円)の経費削減になるという。一方、議員1人あたりの有権者数が増え、「地方の声が届きにくくなる」といった反対意見があり、少数政党も「議会の多様性が失われる」と反対していた。
 私はイタリアの政治情勢や財政状況については全く疎いので、イタリア特有の事情については措きます。しかし、「五つ星運動」とはポピュリズム政党と聞きますので、大衆に安易に受ける乱暴な政策を展開したという感は受けます。もっともポピュリズムといっても、日本の代表的なポピュリズム政党である維新の会が新自由主義一直線なのと比べると、「五つ星運動」は環境保護やスローライフも唱えているそうで、そこは興味深くはあります。

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# by bokukoui | 2020-09-30 23:59 | 時事漫言 | Comments(0)

安倍内閣退陣に際し改めて考えなければならないこと


 なんとか8月中には一度更新しておきたいと思って、一つ記事の準備をしていたのですが、それが吹っ飛ぶようなニュースが入ってきました。
 「金曜日に首相が会見」というニュースがしつこく流れるのを週明けから聞いて、もしかして辞めるのか? いや期待してダメだったら凹むし……と私の心は揺れていたのですが、買い物に出かけてリアルタイムでテレビもネットも見られない状況だった28日の17時過ぎ、どうにも気になって落ち着かず、ガラケーで無理してネットを見たのですが……

 まず最初に断っておけば、私は安倍晋三という政治家を全く評価しません、というか最低の政治家だと思っています。それは、まず何より彼が歴史修正主義に極めて近く、また日本で歴史修正主義を振りかざす人びとが彼を担ぐに熱心であるからです。歴史的な世界の成り立ちを尊重する立場の者として、これは全く容認できません。
 これと通じることですが、安倍政権は公文書を隠匿し、改竄し、破棄してきました。過去の歴史に向き合わないどころか、自分の現状を記録することにも不誠実であり、未来への責任(一文字にあらず)を持つという観念がまるでありません。ただ今の自分さえよければいい、という極めて無責任で幼稚な政権であり、これもまた私が安倍政権を批判する大きな要因です。
 そして安倍晋三とその政権のおそらく最大の問題は、今の自分(たち)さえよければそれでよく、その自分たちの間でしか通じない、身内の言葉で何でも押し切ったということにあるのではないか、私はそのように感じます。記録に残し、あとの時代の(時には別の地域の)人になしたことを伝えようという、いわば普遍の精神をまったく欠いていたのです(歴史修正主義というのも、史料の言葉を自分勝手に、身内でしか通じない読み取りをして歪曲する、という点で同類といえます)。より広く、普遍性のある観念で説明するのではなく、自分たちにとって都合がいいからいいんだ、と押し切ったのです。いいかえれば、他者への想像力を欠き、しかもそれを開き直ったのです。


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# by bokukoui | 2020-08-31 23:59 | 時事漫言 | Comments(2)