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「同人誌と表現を考えるシンポジウム」見学記 つづき

 第1部の続きです。
 長いので一記事に入りきりませんでしたので、第2部以降は別記事として以下に述べます。

〇第2部 どうすべきなのか ~有識者討論~
 第2部のパネラーは以下の通り。(順不同・敬称略)
 坂田文彦 (ガタケット事務局・第2部司会)、斎藤環 (精神科医)、望月克也 (弁護士・松文館裁判弁護人)、伊藤剛 (マンガ評論家/武蔵野美術大学芸術文化学科講師)、藤本由香里 (編集者/評論家)、三崎尚人 (ライター/同人誌生活文化総合研究所主宰)、永山薫 (マンガ評論家)

 斎藤氏は本業の都合で少し遅刻。
 司会の坂田氏のネタ振りによって進む。

・坂田氏:コミケはその長い歴史にもかかわらず未だにアングラ視されているのか。
 第1部で説明されたように自主規制を同人界は行っているが、このことを一歩離れたところからどう見るか。
・永山氏:何重にもフィルターをかけ頑張っている、というのが率直な印象。それが外部に伝わっていないのが問題ではないか。成年コミックややおいも外部からはほとんど見えていない世界。
 同人誌関係者は、自分たちが文化を担っているということを意識して発信すべきではないか。コミケは決して野放しの場ではない、ということを伝える。徒に規制側に対し対決姿勢を強めることは意味がない。

・伊藤氏:印刷所などの細かい対応について、同人やっている知り合いからコミケの基準が厳しいという程度のことは聞いていたが、具体的に知ったのは今回が初めて。永山氏の意見に同じく、この場(マスコミ取材も来ている)で議論する意味は、一つは外部に自分たちの意味を発信すること。もう一つは内部に対して、同人に対し物陰でこっそりやっている的な意識や幻想を抱いていることがあるが、しかし我々もまた世間や社会の一部である。だから徒に規制したがる側を罵倒するのではなく、彼らもまた社会の一部として説得すべき相手である。
 今回のシンポの大枠は、規制当局の報告書の中に同人誌が登場したということ。これが前提。規制が行われる裏には、自分たちが見たくないものを社会から排除したいという意識があるのでは(これは規制に対する糾弾ではない)。
 第1部で示されたように、同人界には自主規制するだけのマナーや意識もある。となれば、規制をする側にもそれはあるだろう。この研究会も、結局は法規制には入らなかった。

・坂田氏:「児童」の定義について。児童ポルノ法は18歳以下、一般のイメージにそぐわないし、学校教育法では「児童」は6~12歳。このあたりについて専門家のご意見を。
・望月氏:初手から話は逸れるが、先程の永山氏の意見に賛成で、松文館事件に関係するまでは同人にアングラなイメージを持っていたが、実際関ってみると皆いろいろと考えており、細かく対応している。外部に分かってもらう活動は大事。
 法律に関して。一度は法律に目を通して欲しい。一度読んだだけでは分からないかもしれないが、そこから疑問を発展させることは大事。
 刑法175条にいう「わいせつ」の基準については、具体的にはチャタレイ事件の判例など。

・坂田氏:表現の自由に関して。
・藤本氏:その前にまず、事の起こりについて。91年の有害コミック問題から表現の問題を考えている。この時書店員が同人誌を売っていて逮捕されたのが、表現の自由について議論が盛り上がったきっかけであったが、それがどの程度浸透したかは未知数。現在ではむしろ後退している懸念もある。今回法規制まで行かなかったことにはホッとしているが、今後は分からない。同人誌はこれまで商業でないから何をやってもいいと見られていたが、書店流通の普及やネット頒布によって状況は変化している。
 表現の自由とは、公権力からの自由。しかしそれは何を表現してもいいということではなく、表現者の責任がある。
 第1部で、BLが女性が考えがちという指摘があったが、刑法175条は男女の性交に限ると明文化されているわけではなく、慣例でそうなっているだけ。また青少年保護条例には引っ掛かる。
 漫画や同人誌にネガティヴなイメージを持っている人が多い。こういう人に対し我々に出来ることは責任感を示すこと。何でも勝手にやっているのではない、という責任感を示すことでイメージを守り、長期的には表現の自由を守ることに繋がる。
・望月氏:175条について。チャタレイ事件の判例(いたずらに性欲を興奮等させ正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの)が生きている。性交場面の量は決定ファクターになっているが、それだけが基準ではない。将来基準が変化してやおいも対象となる可能性はある。
・三崎氏:91年の件について補足。当時は有害コミック運動が盛んだった。しかし同人界は規模が今よりずっと小さかったので、性的描写に無頓着で無修正のものがあった。それが書店に委託されていた(書店も同人に無頓着だった)ために店員が逮捕され、作家や印刷所などの関係者が書類送検された。当時コミケは幕張メッセで開かれていたが、「善意の一市民」が千葉県警に無修正の同人誌を送りつけ、警察がメッセに事情を聞きに来る事態となり、コミケは幕張メッセを追われた。
 コミケットアピールはこれをきっかけとして作られた。会場を借りる上で必要な措置。即売会のかける規制は、なるべくサークルが表現をしやすくするため。

・坂田氏:当時に比しゾーニングは強化されているが、青少年への影響とはどのようなものなのか、精神医学的な知見を伺いたい。
・斎藤氏:精神医学の中でこの問題に関する知見の蓄積はない。メディア論の影響の研究も思想についてはあっても、性的なものはない。クラッパーの限定効果論を当てはめて考えている(注:限定効果論とは、メディアの影響は元々その要素がある者の引き金を引くだけの効果に限定されるというもの)。それによって、表現によって人格に影響がある、という説はほぼ否定されている。
 性的な表現のゾーニングはインターネットによって大きく変わったが、性犯罪の件数は減っている。松文館の高裁判決で裁判官は判決においてこのことを指摘したにもかかわらず、アクロバティックな論理を作り上げて有罪にした。しかしこれを見ても、青少年に対する影響は限られていると考えられる。
 「萌え」カルチャーについて自分の珍説を展開すれば、性的な問題はその世界の中で完結していることが多い。臨床で若者を見た経験ではむしろ、性的な欲望が「萌え」の空間のエコノミーの中で完結しており、現実に出てこなくなる。本田透のように二次元で充分と。(会場笑)これが「バーチャル~研究会」のナイーヴな所。ヴァーチャルなものは現実に直接の影響はないのではないか(元々持っているものを延長することはあり得る)。むしろ現実と乖離する方向では。ラカンの弟子のジジェクが言うには、性交は不純なマスターベーションであり、純度が低いという。
 規制に倫理や価値判断を持ち込むべきではないと考える。
・坂田氏:内的な世界を表現することは創作行為として認められるべきではないかと思う。

・永山氏:仮にヴァーチャルなものに規制をどんどんかけ続けていってしまうと、どうなるんですかね。
・斎藤氏:「健全な性犯罪」が増えるのではないかと思う。
・永山氏:だとすると、少子高齢化の対策にはその方がいいのかも。
※この辺のやり取りはロフトプラスワン的なノリ(笑)で、今日のシンポジウムの中では異色。こういったある種の余裕が大事なのかもしれないとも思う。
・望月氏:なぜ表現の自由が憲法で定められたかというと、一旦表現に制約がはじまるときりがなくなり、規制が強化されることで表現者を萎縮させ、強い表現を使えば表現を殺すことになる。規制が進むと、引っ掛かることを恐れて自主規制するように、表現者個人が萎縮してしまう。
・伊藤氏:永山氏と同じ問いは、自分も新聞記者に取材された時に受けたことがある。その時にどう答えたかというと、「表現が痩せる」。表現が痩せてしまうことは結局のところ誰の得にもならない。表現の制約ははじめるときりがなくなる。
 漫画のような表現については、直接の被害者がいない。なので(被害者がいるから規制すべきだ、という話ではなく)、利害の調整をすることが大事。
 良い/悪い文化と区別はつけられない。ゾーニングは広い意味としては利害の調整
 (良い/悪い文化の区別が出来ない以上は)同人の側にも悪ぶる者がいるのは問題。同人について「こんなのは知らない方がいい」なんて言ったりするような。この言葉は実際、コミケで CUT A DUSH!! の列に並んでいたら隣の人に言われた。(会場笑)いや、友人に頼まれて。
※悪ぶるのは良くない、と言いながら Cut A Dush に並んだ理由を友人に頼まれてと言い訳するところが微笑ましくも面白い。

・藤本氏:児ポ法の改訂について、対象に絵を入れることについて、今回の改訂ではあまりそのような動きはない。しかしこのような動きには強く反対すべきである。絵を入れるという改訂の噂で、『ベルセルク』が書店の店頭から引っ込められたことがあったように、文脈を判断しないこのような規制では、例えば悲惨さを訴えるために児童虐待を描写することもできない。

・三崎氏:これだけ多くの人が漫画の表現を行っている、コミケのような場は世界的にも他にない。そのために海外からも注目されている。(具体的な話はメモし損ねました)
 現在、国が日本の国際競争力強化の一環として、漫画のようなコンテンツ産業について検討しているが、同人のような裾野の広さがあってこそ高みもあり、競争力をもたらしているのだということを、経産省の中堅のような現場の人は理解しているようである。

・坂田氏:まとめに入りたい。児ポ法のような「大人」「児童」「子供」の定義について問題がある。猥褻の基準も春画のように時代によって変わるものである。漫画の創作は実際の児童虐待とは全く違うものであるということを認識すべきである。

 これにて第2部は終わり、以後質疑応答に移ります。

〇質疑応答
 第1部・第2部のパネラーが全員集合。
 質問の内容は、最初の入場時に資料と一緒に配られた質問用紙を第1部終了時に回収し、第2部の間に市川氏らが目を通したとのこと。全部で160通程度が寄せられ、全部にはとても答えられないので、大きく3つに分類して答えるとのことでした。

 質問1:現在の修正はこのままで良いのか、修正に地域差などはあるのか

・市川氏:91年以降自分はコミケの修正を見ているが、近年は薄くなっている。それは様々な要素が関った、世の中の流れというものがあるため。明確な基準はなく、商業誌などを参考にして、今までやってきたことを本にして決めている。
・望月氏:松文館事件の時は、40%網掛けとカラーは白抜きという修正をしていたが、範囲が少ないなどの理由によりアウトとなった。
・市川氏:その基準で行くと今の商業誌はすべてアウトになってしまう。
・鮎澤氏と川島氏、苦笑。規制については同人誌の方が厳しいと指摘。

・市川氏:即売会というのは後がない。商業誌は休刊して別雑誌にするなど方法がある(やりすぎると取次ぎに怒られるが)が、即売会は当日一発勝負。(注:この辺、複数の方が以上の趣旨を補足されていましたが詳細失念)コミケの修正に関して、故米澤氏は自分より厳しかったが、その理由はこの後がないということであった。修正としては、専門書店で売られているものとコンビニ売りのものとの中間ぐらいを狙わざるを得ない。
 修正の基準は社会の流れに従うので、事件が起きれば厳しくなる。例えば夏コミの前、8月前半ごろに、今回の会津若松のような事件があったりすれば。
 ただしこれはコミケ基準。個々の即売会は自分の基準で判断して欲しい。
・坂田氏:刑法175条の基準は時代によって変わるものなのか。
・望月氏:そうですね。・・・その一言だけで済ますのもなんなので付け加えれば、時代の変化というものをよく見ておく必要がある。

 質問2:ゾーニングに関して、もっと厳しくするべきではないのか、即売会ではどうするのか

・鮎澤氏:ゾーニングについては商業・同人区別なしに、条例に従って判断している。必要に応じて身分証の提示を求めたり、ポップなどで18禁であることを案内している。
・川島氏:基本的に虎の穴と同じ。18禁については商業のにはシュリンクをかけ、同人誌は袋に入れて立ち読みできなくしている。専門的な書店として、普通の店より厳しくしているつもりである。
※シンポジウムの帰途、豊島公会堂すぐそばの「とらのあな」池袋店へ確認に立ち寄ったが、同店はフロアを分けて18禁モノを置いているというゾーニングをしているものの、その中では試し読み用の見本を大量に置いていた。メロンブックスの発言は皮肉? 但しとらでも、氏賀Y太氏の作品については「上級者向けにつき試し読みお断り」と見本がなかった。これもゾーニングか。
・中村氏:コミティアでは、島別ではなく列沿いで分けている。ある列では両側に18禁が並ぶようにしているわけで、そこに入らなければ18禁は目に触れない。

 質問3:自主規制のアピールが足りないのではないか、どうするのか

三崎氏:このイベントの報告は、参加者の方もネット上にブログなどで上げてくれるであろうが(ここにも実例が一人)、夏コミのカタログで行う予定で調整中。
坂田氏:主催側でもサイトでアップするなどの対応を考えている。

 最後に、時間の都合上1名だけでしたが、会場に挙手による質問を求めました。筆問したのは毎日新聞の記者の方でした。他にもマスコミは来ていた模様です。

・質問:国や自治体の規制対象に同人誌が入ってきたことの危機感について、即売会の関係者の方からお伺いしたい。
・市川氏:91年の時から対策を考えている。手を緩めればまたそのようなことは起き得る。ただ、そういった自主規制をしていることのアピールは、足りなかったかもしれないと反省している。
・坂田氏:自主的な努力は行ってきたので、自分たちの努力を周知させることが大事だと改めて感じた。今回のことを改めて考える契機としたい。
 最後に、曖昧であることの良さ、ということを故米澤氏が指摘しており、日本文化の特徴は曖昧さにあるといえるが(※ちょっと単純すぎる見方のような気も・・・)、これが失われつつあるのではないかと懸念している。条例や児ポ法が出来ていくことで、曖昧であった(ために時代によって移り変わる可能性があった)刑法175条に、輪郭を与えてしまっているのではないか。

 以上でイベントは終了しました。
 で、例によって随分長くなってしまったので、細かい(どうでもいい)ツッコミは多少本文中に書きはしましたが、全般的な感想はまた稿を改めて。

by bokukoui | 2007-05-19 23:58 | 漫画 | Comments(4)

「同人誌と表現を考えるシンポジウム」見学記

 今年3月末にロフトプラスワンのイベント「エロマンガ・スタディーズVol.1」に行った話を書きましたが、その際最後に告知された「同人誌と表現を考えるシンポジウム」に、当初予定していた所用が流れたりして時間が空いたもので行ってきました。
 このイベントの趣旨が如何なるものか、上掲リンク先より引用しておきます。
 昨年4月警察庁生活安全局の諮問機関として「バーチャル社会のもたらす弊害からこどもを守る研究会」が作られ、携帯電話のフィルタリング、ゲーム・まんがの「有害性」について、様々な議論が行われました。そして、昨年12月に公表された、本研究会の最終報告書においては、様々なメディアと共に同人誌及び同人誌即売会が取り上げられるということになりました。このような公的機関の報告書に「同人誌」が取り上げられるのは、極めて異例のことです。

 こうした状況の背景には、近年、書店販売やネット通販の普及により、これまで即売会会場まで足を運ばなければ目に触れることのなかった同人誌が一般社会に浸透しつつある事が挙げられます。それにより、これまで「同人誌」ということで許容されてきた表現が外部の目に触れることで、様々なトラブルを生じかねない事態も懸念されるようになっています。

 このような状況にどのように対応していくべきなのか、もう一度同人誌の現状を見直し、表現の有り方を問い直すとともに、同人誌での自由な表現を守っていくためには、どのような理論と実践を進めていくべきなのかを議論する場として、標記のシンポジウムを開催することといたしました。(以下略)
 この「ヴァーチャル~研究会」については、報告書が出た当時拙ブログに一文を物した覚えもあり、些かの興味関心を持った次第です。さらに、時折拙ブログにもコメントくださるLenazo氏が本シンポジウムにご参加されるつもりであるとお伝えくださったので、それも何かの縁であると思って出かけたのでした。

 で、13時過ぎに豊島公会堂に行ってみたところ、なんと革命的非モテ同盟の古澤書記長とばったり出くわしたのでした(ご無沙汰してて済みません)。何でも革非同は、「革命的萌え主義者同盟」「革命的オタク主義者同盟」と合同で、6月30日に「秋葉原解放デモ」を行う由。ビラを戴きましたが、まだ公式サイトはない模様。
 会場内に入ってみると、結構な賑わいです。1階席が満員になって2階席にも最後は来場者を誘導していたようですから、500人からの来場者があったものと思います。
 その会場の入口で、またも知人に偶然出会いました。大学の学部(教養前期課程)時代の同じクラスだった人です。「東京大学オタク物語」にて小生が「コミケ会場の机を挟んで再会した」と書いた方です、ええ。
 さらに話が先走りますが、終了後にこれまた偶然に出会ったのが、MaIDERiAのイベント参加時に小生がいつもお会いすることを楽しみにしているサークル・初芝電産の方でした。先日の帝国メイド倶楽部を欠席したのでその時にはお会いできなかったのですが、こんなところで出会おうとは。
 ところで、小生はLenazo氏にはお会いできませんでした。考えてみれば氏にお会いしたことがないので、探しようがないのでした(阿呆)

 話を本筋に戻します。
 豊島公会堂をほぼ埋め尽くす中で行われた「同人誌と表現を考えるシンポジウム」は2部構成で、第1部は来し方及び現状を、第2部は将来の方向について討議を行うということでした。
 以下に会場で取ったメモを元に、シンポジウムの内容を略述します。あくまで小生がメモに基づいてまとめたもので、会場での発言そのものではないということをご諒承下さい。文字の大きさが小さく、灰色で書いている箇所は聞いていた小生の勝手な感想です。

〇はじめに
 ガタケット事務局の坂田文彦氏が挨拶。
・警察庁の報告書を受けてこの進歩を企画したが、今まで自分たち即売会側では性表現について厳しく対応して来たつもりだが、世間一般へのアピールが足りなかったかもしれない。
・来場者がどのような人々か知りたい、と来場者に挙手を求める。その結果、サークル参加者が約5割、一般参加者が約3~4割(坂田氏は「2~3割くらいですね」と仰っていたような気がするが、小生が見た印象ではこのくらいだったと思う)、即売会関係者が約1割、その他印刷出版関係者などが約1割、という程度の構成比であった。
※小生は一応「サークル」に手を上げておいたが、なるほどコミケ以下各種イベントにサークル参加したとはいえ、やってきたことはメカミリ・歴史・評論・非電源系ゲーム・・・実は同人誌の漫画はあんまり(ほとんど)買わないし、自分は場違いな存在ではないかと少し悩んだ瞬間。
・続いて同人誌生活文化総合研究所の三崎尚人氏が「バーチャル社会のもたらす弊害からこどもを守る研究会」とその中心人物である警察庁の竹花豊氏について解説。要点を述べれば、もっぱら携帯電話コンテンツのゾーニングなどを中心に話が進んでいたのに、第7回の会合のしかも後半になって突如漫画の話になり、しかも出来上がった報告書では、会議における漫画の扱いと不相応に漫画についてのページが多い。
・竹花氏の会議での発言からは、氏が「よく分からん連中が何かやってる」的な印象を漫画や同人誌に抱いてることが伺われる。ただし研究会としては法的規制の提言までには踏み込まなかった。

〇第1部 今、どうなっているのか? ~現場からの発言~
 第1部のパネラーは以下の通り。(順不同・敬称略)
 中村公彦 (コミティア実行委員会、第1部司会)、武川優 (日本同人誌印刷業組合)、鮎澤慎二郎 ((株)虎の穴)、川島国喜 ((株)メロンブックス)、市川孝一 (コミックマーケット準備会/COMIC1準備会)、武田圭史 (赤ブーブー通信社)

 まずは各人から現状に関しコメント。

・武川氏
 同人誌印刷業組合には29社が加盟し、オフセット印刷の同人誌の80~85%程度はこの加盟印刷所が刷っている。オフセ本は印刷所の基準をクリアしなければ世に出ない。
 印刷所の性的な修正基準はコミケの基準を踏襲しており、このことhが浸透しており遵守されていると認識している。印刷所相互でもすりあわせを行っている。
 この基準を外れる原稿に対して、猥褻を理由に印刷を拒否することはなるべくせず、相談して修正するようにしている。基準を知らない印刷所に持ち込まれる事態を防ぐため。
 印刷所によって基準が違うこともあり、相互に融通することもある。

・鮎澤氏
 虎の穴では同人誌を扱いながら次第に基準を作ってきたが、曖昧なところも多い。
 まず作品を見て内容をチェックし、判断している。サークル、印刷所、即売会などと連繋するようにしている。同人誌の性描写の基準は書店単独で決めるものではない。
※あくまでも小生の印象ですが、鮎澤氏は明確に断言することを避けておられたような感があります。

・川島氏
 メロンでは一定の基準を定めており、性器描写に消し・ボカシがあれば良しとしている。ガイドラインを設けて18禁と一般とを区別。同人誌を扱う書店にはこのように既に対応されたものが並んでおり、大きなトラブルは記憶にない。

・市川氏
 コミケの性描写に関する基準はコミケットアピールで述べている通り。
 即売会は対面販売を基本にしており、それによって18歳以下への頒布は防ぎうる。
 この二点は会場であるビックサイトや警察にも伝達している。

・武田氏
 赤ブーブー通信社のイベントは女性向け同人誌が多いが、女性向けの世界では男性向けの性描写の問題を「対岸の火事」のように思っているところがある。男性向けでは同人誌の表紙に「18禁」を明記するところが多いが、女性向けではそのような意識が薄いというよりない。
 コミックシティでは表紙に「18禁」を入れようというアピールを昨年末頃からはじめている。具体的には3月のイベントから。いろいろ模索中。

・中村氏
 コミティアはアダルトの比率が少なく、男性向けが5%、女性向けが2、3%くらいで全体で1割以下。あまり性描写に関し神経質になることはなかった。
 ここ1、2年修正することがポツポツあるが、印刷所の修正が甘くなっているのか。新規の印刷所もあってこれまでのコンセンサスがずれてきているのか。

 以下司会者中村氏を中心に意見交換。

・中村氏:コミケの基準について説明を。
・市川氏:性器の露骨な描写が修正を要する。当日の見本誌をスタッフがチェックし、その中で問題になったものを自分が最終チェックしている。具体的には男性器のカリ、女性器のクリトリスは修正が入っていることが望ましく、その修正はベタなどで全く見えないようになっていることが望ましい。
 本全体を見て最終的な判断を下す。18禁をはっきりうたって本のゾーニングをしている場合、奥付がしっかりしている場合は甘めに判断している。商業誌でもコンビニ売りと専門書店向けとで基準が異なるようなものである。
※ゾーニングの基準は納得。しかし剥けてないショタのモノは修正が要らないのでしょうか!?

・中村氏:コミックシティでは3月から取り組みはじめて、参加者に変化は見られたか。
・武田氏:18禁を扱うサークルには、その旨を公示するためのカードを用意して配っているが、サークル自身で表示を用意する場合が多く、予想したよりもカードを配る枚数は少なかった。カードについてはデザイン面での苦情があったりして、一定程度の浸透はしているかと思う。

・中村氏:印刷は甘くなった印象があるか。
・武川氏:最近はカラーが増えたが、カラー原稿の修正はモザイク加工が多く、白や黒のベタに比し「修正」という意識は薄いかもしれない。そのあたりで基準は揺れている。
 組合に入っていない印刷所であっても、同人誌印刷でよく知られている印刷所とは交流もあり、修正の基準は分かっている筈。そのようなところも含めると、同人誌を扱う印刷所の97%くらいは入るだろう。データ入稿の普及でどこでも刷れるようになり、新規参入が増えたというが、新規参入したといっても全く聞いたことのない印刷所であることは少ない。

・中村氏:データ入稿によってチェックが行き届かなくなったり、カラー原稿が増えてモザイク修正というような甘さがあるのでは。
・武川氏:問題のあるものがそんなに沢山出てきているという認識はない。問題のありそうなものはコミケ準備会に送って見てもらっている。
・市川氏:時間があれば送られたものは見ているが、サークルは往々にして入稿がギリギリであるため(会場笑)、時間的に間に合わないことが多い。即売会のその場で指摘して修正してもらっている。印刷所と即売会と同人誌取扱書店の連繋は取れており、どこかで止めるようになっている。

・中村氏:書店では同人誌と商業作品と両方あるが、両者の基準は異なっている(二重基準)のかどうか。
・川島氏:商業と同人は別に扱っている。性描写の基準は同人誌の方が厳しいくらい。同人誌の基準は先程述べたとおりだが、メロンの基準はコミケより緩いかもしれない。ただし作品の文脈上、展開上の意味を踏まえて柔軟に判断している。『フランダースの犬』の最後で、舞い降りてくる天使の股間にボカシがあったら興ざめである(会場笑)。問題のあるものは世に出していない、サークルはどこでも相談してほしい。
 商業については入荷したものを売るだけ。
・鮎澤氏:すべてチェックし切れているわけではない。販売してから問題が分かることもある。
 サークルとの関係については、サークルをクリエイターとして尊重することが基本である。それでもどうしても調整がつかないときは販売をやめることもある。チェックを何重にもして漏れのないようにしているし、基準について広報運動も行っている。

・中村氏:同人誌の基準は他を見ながら横並びでやっていることが多いので、商業誌とは異なるかもしれない。商業誌の場合は確信犯的な場合もあったりする。
 修正に関しトラブルが起こったことはあるか。
・市川氏:「何で塗るんだ」というトラブルは、コミケ2回につき1回くらいある。最近は女性向けに修正が多くなりつつあり、前回のコミケでは遂に男性向けより多くなった。やおい・ジュネ系が過激化しているが、女性は男性器に修正を入れるという意識が薄い。
・武田氏:女性向けでは性描写の問題を、先程述べたように「対岸の火事」とみている。2~3年前のことだが、サークルで18禁と猥褻物との区別がついていないところが多かった。18禁は年齢を過ぎればいいが、猥褻物は何歳になっても同じことである。
・川島氏:女性向け専門の同人誌書店もやっているが、女性向けの同人誌は過激なものと、いわば「官能的」なものとに二分される傾向がある。
・市川氏:女性向け同人誌にはロマン(笑)なのと、ガチなエロのとがある。ガチなのは商業やおいの男性器には修正がないのを見て、同じ様に作ってしまう。コミケ基準と商業とは違う。最近は女性向けの方が修正で揉めることが多い。さらに、同人誌に奥付がないところも。
※やおいの話題はこの後も出て、同人に占めるウエイトを考えれば重要なテーマ。にもかかわらず今回のパネラーにはやおいのエキスパートといえる人がいなかったのではないかと思う。女性のパネラー自体一人しかいなかったし。

・中村氏:奥付のないことが近年多い。自分のような古い人間にとっては住所を書くのが当たり前だったが、最近は個人情報保護やストーカーの問題などで住所は書かなくなった。しかし、何らかの連絡手段を示して責任の所在を示す必要があるのでは。
・市川氏:サークル名、メールアドレス、発行年月日は最低入れて欲しい。印刷所では奥付についてサークルに指導したりはしないのか。
・武川氏:徹底していないかも。URLとかだけ入れればいいような。
 最近は奥付に印刷所を入れないことが多い。メアドやURLは英文字ばかりなので、漢字名の印刷所が入るとデザイン上不似合いという理由もあって。
・市川氏:印刷所の名前を英語に変えては(笑)
・中村氏:印刷所としては自分の仕事なので入れて欲しいところだろう。

・中村氏:コミケ誕生以来、同人誌に30年以上の歴史はあるが、参入や退出が多く、爆発的に拡大したこともあって、過去の経験が必ずしも伝わっていない。それがこのシンポ開催の理由の一つでもある。
 警察庁の研究会の報告が今回のシンポの直接のきっかけで、警察当局は自主規制などをさせたがるが、個人の活動が基本である同人の世界に、なるべく自主規制的なものは作りたくない。

 以上、およそ一時間で第1部は終了し、休憩を挟んで第2部へ。
 で、長すぎて一つの記事に入らないので、続きは別の記事に。

※追記:古澤書記長のTB記事に対する更なる返信記事はこちら

by bokukoui | 2007-05-19 23:57 | 漫画 | Comments(0)